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【自由研究】料理の中に科学を探せ!おうちでできる卵実験 - リセマム

 「“おいしい”ってどうやって決まるの?」「どうして卵はゆでると固まるの?」といった子どもの素朴な「なぜ?」にすらすらと答えられる保護者はどれくらいいるだろうか。自宅で過ごすことが多い状況の中で、料理は人の五感や物質の化学反応など「科学」を体感できる良い機会。

 料理に潜む科学を「子供の科学 2020年 7月号」よりご紹介する。キッチンを理科実験室に変えて自由研究などに役立ててほしい。

取材・文:平松サリー
イラスト:イケウチリリー、新保基恵

食材を操るサイエンスを知ろう「料理のロジック」

 新型コロナウイルスの影響で、外出しづらい状況が続いているね。みんなもお家で過ごす時間が増えているはず。そんな今、お家でできる活動として、料理に注目が集まっているよ。みんなの中にも、すでに料理に挑戦した子や、これからしてみたい子がいるんじゃないかな?

 そこで今回は、料理の科学を特集だ。料理を分子レベルで研究している宮城大学の石川伸一教授にお話を伺ってきたぞ。調理中に起こる化学反応や、科学技術を使って生み出される新しい料理についてたっぷり紹介するよ。さらに、自由研究にオススメの実験にも注目だ!

Part 1.おいしさを生み出す要素

「おいしい」ってどうやって決まるの?

 まず初めに、料理を構成する重要な要素の1つ、「おいしさ」について考えてみましょう。

 「おいしい」というと、まずは「味がよい」というイメージを思い浮べる人が多いかもしれません。確かに、私たちが何かを食べるときには舌の味細胞(みさいぼう)という細胞で食べ物の味を感じていますが、おいしさを構成しているのは味だけではありません。

 例えば匂い。焼いた肉の匂いや果物の甘い香りなど、匂いもまた、おいしさを構成する要素の1つです。果物のゼリーを何種類か用意して、目隠しをして鼻をつまんだ状態で食べると、どのゼリーを食べたのかわからなくなってしまいます。このように、私たちが食べ物を味わうとき、匂いもまた大きな役割を果たしています。

 温度も大切です。味噌汁やおでんのホカホカとした温かさや、アイスクリームのひんやりとした冷たさも、おいしさの一部として感じられます。この他にも、見た目や食感など、食べ物が持つさまざまな要素を、私たちは五感を総動員して感じているのです。

 おいしさに関わっているのは食べ物だけではありません。私たち「食べる人」側の要因も影響を与えています。例えば、お腹がぺこぺこだと、食べ物がいつも以上においしく感じられることがありますよね。また、風邪をひいているときや落ち込んでいるときには、食べ物の味がよくわからなかったり、おいしく感じられなかったりすることもあります。つまり、お腹のすき具合や体調、気分によって、おいしさの感じ方は変化します。

 また、その人の育ってきた環境や食文化、体験によってもおいしさは変わります。懐しい料理をおいしく感じる一方、慣れない匂いや見た目の料理、嫌な思い出のある料理はおいしく感じられないこともあります。その人がこれまでどんなものを食べ、どんな体験をしてきたのかがおいしさの感じ方に影響しているのです。

 同じ物を食べたとき、ある人にとってはおいしくても、別の人にとってはそうでなかったり、昨日おいしいと思ったものが今日はおいしく感じられなかったりすることもあります。

 このように、さまざまな要因が複雑に絡み合っておいしさをつくりあげていますが、おいしさをつくりだすために、これまでいろいろな調理法が生み出されてきました。その調理法には、食材の化学変化をはじめ、多くの科学的要素が関係しています。では次に、この調理法について詳しく見ていきましょう。

Part 2.料理の中に科学を探せ!

卵の変化に隠された料理のサイエンス

 食材を調理するとき、調理器具の中ではさまざまな変化が起こっています。例えば、目玉焼きやゆで卵のように、卵を加熱すると固まりますが、これは卵に含まれるタンパク質が熱によって変性して固まる「熱凝固性」による現象です(図1)。

 卵の主な成分であるタンパク質は、たくさんのアミノ酸が数珠のようにつながった鎖でできていて、生卵の状態では、鎖が折りたたまれた粒状で水の中に漂っています。

 熱が加わると、折りたたまれていた鎖が広がって、互いに絡み合い、網目のような状態になります。こうなると、元の粒状のときのように自由に動き回ることができなくなり、「凝固」、つまり固まった状態になります。

 卵に含まれるタンパク質にはいろいろな種類があります。卵白と卵黄でも性質が異なり、それぞれのタンパク質が固まる温度も違います(図2)。卵白の凝固に一番重要なタンパク質であるオボアルブミンは約78度で固まり、卵黄の凝固に一番重要なタンパク質である低い密度リボタンパク質は約65度で固まります。この違いを利用して、さまざまな状態のゆで卵をつくることができます。

 沸騰した湯に卵を入れて7~8分ゆでると、卵白には充分熱が伝わって固まりますが、卵黄までは熱が伝わりきらないので、卵黄だけがとろとろの半熟卵になります。また、卵黄と卵白それぞれが固まる温度の中間、70度前後で30分ほど温め、中まで充分に熱が伝わると、先ほど反対に、卵黄だけが固まって卵白はとろとろの温泉卵が出来上がるのです。

 目玉焼きをつくるときも、加熱条件を変えることで化学変化をコントロールして、味わいを変化させることができます。

 フライパンで目玉焼きをつくると、フライパンに接っしている部分が茶色く色づき、香ばしい香りがします。これは「メイラード反応」という現象によるものです(図3)。肉を焼くといい匂いがしたり、パンの表面がキツネ色に色づくのもこのメイラード反応が起きるためです。

 この反応は120~140度以上でよく進むので、それよりも低い温度で目玉焼きをつくると、あまり、色や匂いがつきません。例えば、電子レンジで目玉焼きをつくると、100度程度で加熱されるので、メイラード反応は起こりません。

 卵は熱によって固まり、食感が変化しますが、凍らせることでも食感が変わります。生卵を殻ごと凍らせて解凍すると、卵白はさらさらと水っぽくなり、卵黄はもちもちと弾力のある食感に変わります。ゆで卵では逆に、卵黄にはあまり変化がありませんが、卵白が目の粗いスポンジのようにスカスカになってしまいます。

 卵には水分が多く含まれており、凍らせると卵の中で氷の結晶ができます。氷の結晶が卵のタンパク質に影響を与え、食感を変化させるのです。

 その他にも、卵には起泡性、つまり泡立ちやすいという特徴があります。この特徴を利用したものがメレンゲです。卵白をかき混ぜると、水分の中に空気の泡が取り込まれます。また、かき混ぜることによって、加熱したときと同様に、折りたたまれていた卵白のタンパク質がほどけます。これが空気の泡を取り囲んで覆うので、泡が補強されて壊れにくくなるのです(図4)。

 卵白だけを泡立てると非常によく泡立ちますが、ここに卵黄が入ると泡立ちが悪くなります。これは卵黄に油脂が多く含まれるためです(図5)。泡を補強しているタンパク質の膜は油脂があると不安定になるので、卵黄が混ざっていたり、ボウルが油で汚れていたりするとうまくメレンゲができません。

 「分子調理学」「未来の料理」「実験料理」など、続きは「子供の科学2020年 7月号」本誌でお楽しみください。

<協力:誠文堂新光社>

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July 22, 2020 at 07:45AM
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