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初等中等教育分科会(第123回) 議事録 - 文部科学省

1.日時

令和元年10月4日(金曜日) 13時~16時

2.場所

文部科学省旧庁舎 6階第2講堂

3.議題

  1. 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律の施行状況に関する議論の取りまとめについて
  2. 児童虐待対応に関する取組について
  3. 学校安全に関する取組について
  4. 新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会の議論の経過について

4.議事録

【荒瀬分科会長】 定刻になりましたので,ただいまから第123回中央教育審議会初等中等教育分科会を開催いたします。
本会議は,初等中等教育分科会運営規則第5条により,公開を原則としております。また,第6条により,会議を撮影,録音,録画する場合は,事務局が定める手続により申請するとともに,分科会長の許可を受ける必要があります。申請がない行為は行うことはできないことはもちろん,会議の進行や他の傍聴を妨げる行為をした場合は,退場をお願いする等の適切な措置をとることもありますので,あらかじめ御了承ください。なお,傍聴者個人を特定するような撮影及び録画は御遠慮くださるようお願いいたします。
本日の議事に入ります前に,前回5月8日以降で,委員の交代に伴う新たな委員の任命及び事務局の人事異動があったとのことですので,事務局より御紹介をお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】 事務局,教育制度改革室長,田中でございます。
それでは,5月8日の会議以降,新たに本分科会に御就任いただきました委員の皆様を御紹介申し上げます。
朝日滋也委員でいらっしゃいます。
【朝日委員】 よろしくお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】 川越豊彦委員でいらっしゃいます。
【川越委員】 よろしくお願いします。
【田中教育制度改革室長】 喜名朝博委員でいらっしゃいます。
【喜名委員】 よろしくお願いします。
【田中教育制度改革室長】 萩原聡委員でいらっしゃいます。
【萩原委員】 萩原です。よろしくお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】 それでは次に,事務局の紹介をさせていただきます。
7月9日付で総括審議官に就任いたしました串田俊巳です。
【串田総括審議官】 串田でございます。よろしくお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】 同じく7月9日付で総合教育政策局長に就任いたしました浅田和伸です。
【浅田総合教育政策局長】 浅田です。よろしくお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】 同じく7月9日付で初等中等教育局長に就任いたしました丸山洋司です。
【丸山初等中等教育局長】 丸山でございます。よろしくお願いします。
【田中教育制度改革室長】 8月1日付で大臣官房審議官に就任いたしました蝦名喜之です。
【蝦名大臣官房審議官】 蝦名でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【田中教育制度改革室長】 同じく7月9日付で初等中等教育企画課長に就任いたしました浅野敦行です。
【浅野初等中等教育企画課長】 浅野です。よろしくお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】 同じく7月9日付で健康教育・食育課長に就任いたしました平山直子です。
【平山健康教育・食育課長】 よろしくお願いします。
【田中教育制度改革室長】 同じく7月9日付で参事官高校担当に就任いたしました塩川達大です。
【塩川参事官】 どうぞよろしくお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】 9月11日付で初等中等教育局企画官に就任いたしました村尾崇です。
【村尾企画官】 よろしくお願いいたします。
なお,7月9日付で社会教育振興総括官に寺門成真が就任しておりますが,本日は用務の関係で遅れての出席となります。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。
続いて,会議資料のペーパーレス化と本日の資料につきまして,事務局から御説明をよろしくお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】 引き続きまして御説明申し上げます。現在,文部科学省においては,審議会等の会議資料のペーパーレス化の取組を進めておりまして,本分科会におきましても,本日の会議は基本的にペーパーレスにて進めさせていただきます。慣れるまで,事務方も含めまして御不便をお掛けすることもあるかと存じますけれども,何とぞ御理解のほどよろしくお願い申し上げます。
それでは資料の確認をさせていただきます。
まず,机の上には,議事次第と資料5のみ印刷したものを御用意しております。
その他の資料につきましては,全て端末の中に御用意しております。端末上に,本日の資料を既に開いてございますが,画面の左側の表示のとおり,議事次第,資料1,資料2,資料3,資料4,資料5に加えまして,参考資料1から5-3までがございますので,御確認をお願いいたします。なお,参考資料1として,令和2年度概算要求に関する資料をお示ししております。
不明な点等ございましたら,お近くの事務局員までお申し付けください。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
それでは議事に入りたいと思います。今日は今タブレットで御覧いただいていますように,5つ―5つ目はその他でありますけれども―の議題がございます。まず,第1の議題といたしまして,義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律の施行状況に関する議論の取りまとめについて,事務局から御説明をよろしくお願いいたします。
【大濱児童生徒課長】 それでは,児童生徒課長の大濱から,まず,不登校の部分について御説明をいたします。資料1でございます。
1ページ目でございますが,この施行状況の検討につきましては,法の附則3項に,施行後3年以内にこの法律の施行状況について検討を加え,その結果に基づき必要な見直しを行い,政府として必要な措置を講ずるものとするという規定がございますので,この規定に基づきまして,昨年12月に,有識者会議を夜間中学と合同で開催したところでございます。
その後,2回,3回,4回という形で有識者会議を行いつつ,また全国の実態調査を実施し,その結果もこの有識者会議に御報告し,本年6月末に,合同会議にて議論を取りまとめたところでございます。
3ページ目に進んでいただきまして,この議論の取りまとめの概要でございますが,左側に「現状・課題」,右側に「対応の方向性」ということでまとめておりまして,重要なものといたしましては,左側の〇2つ目でございますが,法や基本指針の内容が教職員に十分周知されていない,その趣旨に基づく対応が徹底されていないという御意見を頂戴いたしました。大変耳が痛い御指摘でございますが,これにつきましては,右側の1つ目の〇でございますが,教員研修等,あるいは行政説明の機会等でしっかり法や基本指針の趣旨の理解を深めることを,我々としてやっていかなければいけないということでございます。
それから左側に戻りまして,〇の4つ目でございますが,教育支援センターというのが全国にございますが,これが約6割の自治体にしか設置されていないというような状況がございますので,こちらにつきましては右側の〇の3つ目でございますけれども,しっかりと設置していただくように推進するとともに,小さい自治体につきましては,広域連携等の工夫を凝らし,やっていっていただくことが必要だろうという御指摘を受けております。
また,左側に戻りまして,〇の5つ目でございますが,民間の団体・施設との連携不足という部分もございます。すなわちフリースクール等の多様な場を提供している様々な団体等と,学校あるいは教育委員会との連携が不十分ではないかという御指摘を受けておりますので,こちらにつきましても,今後しっかりと連携していくということで進めてまいりたいと考えております。
4ページ目でございますが,来年度概算要求として,「不登校児童生徒に対する支援推進事業」について1枚にまとめたものでございまして,時間の都合上,詳細は割愛させていただきますが,先ほどの取りまとめを受けまして,政府としても,不登校児童生徒の支援に対する体制をしっかり整備していく必要があろうということで概算要求しております。
5ページ目は,スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーによる教育相談体制の充実というのは非常に重要でございますので,参考としてお付けしております。
児童生徒課分は以上でございます。
【浅野初等中等教育企画課長】 引き続きまして,初等中等教育企画課から,夜間中学部分について御説明させていただきたいと思います。今の資料の6ページ目になります。夜間中学部分につきましては,取りまとめの内容として大きく4点まとめてございます。
1つは,現在9都府県27市区33校設置されている現状を鑑みて,全ての都道府県に少なくとも1つの夜間中学,そして全ての指定都市において夜間中学が設置されるよう促進するということがまとめられてございます。
2つ目でございます。スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーといった専門人材と一緒に,チームとしての学校を推進することや,日本語指導の資質向上,経済支援の在り方についてきちっと検討するということで,教育活動の充実,そして柱の3つ目で協議会の設置ということで,既に夜間中学が設置されている都道府県も含む全ての都道府県で協議会等の設置を促進するということ,そして大きな4点目で広報活動の推進ということが取りまとめられてございます。
続きまして7ページ目では,来年度の概算要求で要求させていただいています,夜間中学の関係の予算の要求でございます。1つは,さらなる設置促進ということで,新しく作るところの新設の補助でありますとか,それから都道府県における協議会の設置のための支援,そして今既に設置されている学校の教育活動の充実の内容を盛り込んでいるところでございます。
以上でございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。それでは,今御説明いただきました件に関しまして,御質問,御意見等ございましたらお願いいたします。いつものように札を立てていただきまして,見えるようにしていただければと思います。清原委員,橋本委員,道永委員ですね。それでは,今申し上げました順番によろしくお願いいたします。
まず清原委員,どうぞ。
【清原委員】 御説明ありがとうございます。夜間中学について質問させていただきます。出入国管理法の改正等により,外国人が増加する見込みもありますし,現時点でも義務教育未修了者が,少なくとも約12万人以上いらっしゃるということで,現在設置されていない38の道県と13の指定都市についてでございますが,夜間中学が設置される見込みの時期とか,あるいはそれを進めていく上での課題につきまして御説明いただければ有り難いと思います。よろしくお願いします。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。御質問はまとめてお答えいただくということでよろしくお願いいたします。
それでは,橋本委員,どうぞ。
【橋本委員】 質問ではなく意見ですけれども,先ほどの教育機会確保法の施行条件に関する議論の取りまとめの中にも,主な対応の方向性で,教育支援センターの設置促進,設置推進が挙げられていますが,京都府におきましても,このセンターがやはり学校復帰等の実績を上げているということもありまして,不登校児童生徒支援の拠点と位置付けております。
それとともに,センターにおいては体制が必ずしも十分でないということで,その強化を図るために,今年度から府の方で直接,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー等の配置支援というものを行っております。国においてもスクールカウンセラー等の拡充を図っていただいているんですけれども,こうしたセンターへの体制強化という視点から,引き続き支援の充実をお願いしたいなと思います。
それと,特にスクールソーシャルワーカーについてなんですけれども,どうしても社会福祉士等福祉職場がやはり根拠地といいますか,そちらの方に人がどうしても流れてしまう。学校で働いてもらうのになかなか適した人材が確保しにくいという事情があります。そこで例えばなんですけれども,退職された教員が社会福祉士の資格を取得しやすくなるような,そういう制度的なインセンティブが設けられないかなと,そんなふうに提案したいなと思っております。
それから夜間中学なんですけれども,なかなか実際に数多く設置することは難しいのかなと思います。また地理的には,隣接県の夜間中学に非常に近い位置にあるという地域もありまして,そういうことを考えますと,既に設置されている夜間中学をもっと活用していく,そういう視点に立って,設置する市町村以外に居住する者への入学を認める場合に何らかの支援を行う,こういった手立ても講じられないかなということを提案したいと思います。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
それでは,道永委員,お願いいたします。
【道永委員】 ありがとうございます。今,橋本委員がおっしゃったことと少し重なりますが,いわゆるスクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカーは,どういった資格の人が果たしてその役になっているのかということと,実際の人数を増やしたいという,支援事業というのがございますけれども,実際に働いている方がどれくらいいらっしゃるかというのを伺いたいと思います。
またもう一点ですが,フリースクールと夜間中学の生徒たちの健康管理,それに対して文科省はどのように対応しているかを伺いたいと思います。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。ほかに御質問等ございませんでしょうか。
それでは今,清原委員と道永委員から御質問が出ました。そして橋本委員から御指摘といいますか,御提案がありましたけれども,これにつきまして事務局の方からよろしいでしょうか。
【大濱児童生徒課長】 まず,橋本委員の御指摘でございますけれども,教育支援センター,これは我々としても不登校支援の中核,要としてしっかり機能させるべきものと考えております。そういった意味で,先ほど御指摘がございましたが,教育支援センターにスクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカーを配置,拡充できるような形で,来年度概算要求しているところでございますので,教育支援センターにスクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカーを配置していこうというような方向性は,御意見のとおりでございます。
それからスクールソーシャルワーカーの人材確保の関係でございますが,こちらも御指摘のとおりでございまして,非常に人材が偏在しているといいますか,都市部に集中していて,地方に少ないという現状等がございますので,そういった意味で,先ほど御指摘がございましたけれども,退職教員の活用ということも非常に重要だと考えております。
退職教員の方に頑張って勉強していただいて,新たに資格を取っていただくということもこれは一案でございますし,それについての支援ということも考えていかなければいけないと思いますが,他方で,退職教員でも一定の知識・技術があり,それぞれの自治体が,スクールソーシャルワーカーとしての職務を適切に遂行できると認めれば,資格が必ずしもなくても,スクールソーシャルワーカーとして活動をしていただけるという事例もございますので,そういった意味ではそれぞれの自治体の判断で,退職教員の方にその職務に当たっていただくということは,現状でも可能でございます。
それからあとは,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカーの配置状況でございますが,まず資格でございますけれども,スクールカウンセラーにつきましては専門性が高く,ほとんど臨床心理士の資格を取っておられる方がなっているという現状でございます。それからスクールソーシャルワーカーにつきましては,社会福祉士の方が6割程度いらっしゃいまして,あとは精神保健福祉士の方が3割程度ということで,大半をこのような形で占めていただいているということでございます。
あとは配置の状況でございますけれども,スクールソーシャルワーカーにつきましては,平成29年度の実人数でいきますと約2,000人ほどの配置になっておりまして,今の目標が,全中学校区(約1万中学校区)に1人ずつという配置の目標で進めているんですけれども,こちらにつきまして,通常1人が2,3中学校区を掛け持ちされている方が大半でございますので,そういった意味ではカバーしつつあるということでございます。いずれにしましても,しっかりと配置を充実していくことが大変重要なことであると考えておりますので,我々にできることをしっかりやっていきたいと考えております。
以上でございます。
【田中教育制度改革室長】 続きまして,まず,清原委員から夜間中学について御質問いただきました点に御回答申し上げます。
御指摘のとおり,外国人の増加,それから義務教育未修了者の方も高齢者の方でいらっしゃいますし,それから不登校を経験されて,中学校の卒業証書はもらっているんですけれども,実質的にしっかり学べなかった,こういった方々の学び直しということも含めて,夜間中学の重要性というのは高まっている。そういった中で,先ほど話がありましたように,全ての都道府県,それから全ての指定都市に夜間中学の設置を国として目指しているところでございます。
これは国としての目標でして,自治体に義務を課すということではないわけではございますけれども,先ほどお話がありましたように,未設置地域の設置を目指すべく,先ほどの予算のようなこともやらせていただいておりますけれども,最近の動きといたしましては,今年の4月に埼玉県の川口市,それから千葉県の松戸市に夜間中学が新たに開校いたしました。これは正にその教育機会確保法を受けた後の動きということでございます。
そのほかにも,令和2年度,来年度でございますけれども,茨城県の常総市が夜間中学を設置する予定でございます。また,令和3年度,2年後でございますけれども,初めての県立の夜間中学ということで,徳島県,それから高知県が夜間中学を設置するということで,今動いていらっしゃいます。またつい最近は,令和4年度の夜間中学設置を目指すということで,札幌市も設置を表明されました。
このほかにも地方議会等で,教育長から夜間中学の設置を検討するという御答弁も幾つか頂いておりますし,表になっていないことでも私どもにいろいろ御相談いただいておりますので,先ほど説明申し上げました予算などを使って,しっかりその検討を私どもとしても後押ししていきたいと思っております。
それで難しい点でございますけれども,やはり夜間中学というのは学齢経過者が対象となります。学齢の児童生徒であれば,当然,6歳の子たちが何人いて小学校を作る,12歳の子たちが何人いて中学校何クラスと言えるわけですけれども,夜間中学の場合は,果たして何人の生徒さんが入ってくるのか,更に夜間中学の生徒さんというのは,例えばひきこもりがちの方であったりとか,あるいは外国籍の方で,必ずしも言葉が十分分からない,そういったこともあって,なかなか夜間中学があるよということが届かないということがございます。
そういったことで,ニーズの把握が非常に難しいというところが,各自治体からの課題として挙げられておりまして,私どもとしては,そのニーズの把握につきましても,このようにやるという方式も今までもお示しさせていただいておりますし,またこの予算の中でも,ニーズ調査にも使えるようにすることで,しっかりこの設置を呼び掛けてまいりたいと考えております。
それから,橋本委員から御意見を頂きました点ですけれども,御指摘のとおり,夜間中学というのは,全ての自治体で全ての市町村であるほどのニーズは恐らくないと思っております。そういう意味では,ある1つの自治体があったら,そこに隣接の自治体からも入学してもらうということは非常に重要かと考えておりまして,現に,例えばこの4月に開校いたしました埼玉県の川口市の夜間中学につきましては,川口市は,明確に川口市のためだけではない,近隣の自治体からも是非通っていただきたいと訴えておりまして,実際,各教育委員会との協力の下,越境した形での生徒が入ってございます。
また,夜間中学によって差はあるのですけれども,東京都なども含めて,在住者だけではなくて,例えば在勤者であるとか,そういった方々も含めて,正に圏域を越えた,その市域を越えた夜間中学の入学者というのを受け入れているところでして,私どもとしても正にそういったことが必要であると考えております。
一方でそうなりますと,費用負担の問題等当然生じてまいります。ここも実際によってまちまちですけれども,ここで県の協議会の設置を促すということもありましたけど,ここは重要だと思っておりまして,やはりこういった夜間中学のニーズのある方というのは,市域を越えて存在するけれども,かといって全ての市に作るほどではないとするならば,正に県の方で法律に定める協議会を作っていただいて,自治体間,各市町村の調整の旗振り役をしていただくことも必要かと思っておりますので,是非各都道府県におかれましては,そういった取組もしていただきたいということで,また,私どもは各都道府県さんにも働き掛けをしてまいりたいと考えているところでございます。
以上でございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。とても丁寧に御説明いただいたと思いますが。
【平山健康教育・食育課長】 すみません,あともう一つ回答よろしいでしょうか。
【荒瀬分科会長】 失礼しました。申し訳ありません。
【平山健康教育・食育課長】 フリースクールと夜間中学における健康教育についてどうかということですが,フリースクールの不登校の子供たちについては,毎年6月までに学校健康診断を受けなければならないということになっておりますので,保健室に来られる生徒さんは保健室に放課後や長期休みの間に来ていただく,学校医の診断が必要な場合には学校医の診療所で実施してもらうなど,児童生徒がそれぞれの状況に応じて受診できるように配慮しながら,柔軟な対応をしていると承知しております。
ただ,夜間中学における健康教育,学校健康診断というのは,まだ十分研究が進んでおらず,特に児童生徒でない大人の方をどう考えるのかとか,そもそも不登校といっても所属の学校に本当に離れたところにいる方はどうするのかとか,健康教育も重要な部分ですので,きちんと対応できるように,そういう部分はもう少し研究してまいりたいと思います。
【荒瀬分科会長】 大変失礼いたしました。道永委員にも失礼いたしました。申し訳ありません。今御質問いただいた皆さん,よろしいでしょうか。
若江委員,どうぞ。
【若江委員】 今の件で追加で御質問というか,確認をさせていただきたいんですが,スクールカウンセラーの資格に関しては臨床心理士というお話でしたが,昨日ある県の教育委員会にお伺いしておりますと,スクールカウンセラーの資格はこれから公認心理師という,「士」ではなく,医師の「師」,そちらが必要だとお聞きをしたところです。これは国家資格と民間資格の違いだということですけれども,文科省としては臨床心理士で,その公認心理師が必要という条件はつけておられるわけではないということですか。そうしなきゃいけないということをお聞きして,ますます配置が大変ですねということをお話ししていたところですので,ちょっとそこを教えていただければと思います。
【大濱児童生徒課長】 御質問の件でございますが,こちらの公認心理師というのも国家資格としてスタートしたばかりでございます。他方で,それを取らなければいけないのかということにつきましては,必ずそれを取らなければスクールカウンセラーに就けないとは我々は考えておりませんので,従前臨床心理士の資格を取っておられる方がプラスアルファで取る分には全く問題ありませんが,それがないからスクールカウンセラーに就けないという考え方はとっておりません。
【荒瀬分科会長】 よろしいですか。ほかにございませんでしょうか。どうぞ。
【長谷川委員】 ありがとうございます。フリースクールについてなんですけれども,子供たちの金銭的な支援というところです。フリースクールも当然学費というものが発生していて,昨今世の中の流れとしても,私立学校が無償化されていくというところもあると思いますが,フリースクールに通うような子供たちに対する学費の支援をどうお考えなのかという観点と,今回の教育機会確保法,これ自体が子供たちの休息をしっかりと認めるというところは非常に大きな前進であったと思っていますが,家庭での学習であったり,フリースクールでの学習も義務教育として認めるというところまで進めるのが理想的であると思っています。そこに向けての見通しや取り組み方についても御意見を伺えればなと思っています。
【大濱児童生徒課長】 まず,経済的支援につきましては,それぞれの自治体が独自にしっかり支援しているところもございます。そういった意味で,それぞれの地域によって様々でございます。我々が国として,来年度補助事業としてやろうとしていますのは,例えば交通費ですとか,あるいは宿泊体験等の体験活動をやる場合や実習のためにいろいろなものを買ったりする場合の実費の支援として,自治体が補助した額の3分の1を国庫補助で補助することを考えております。
そういった意味では,それぞれ地域の実情に応じて,不登校児童生徒にどういう形でしっかり経済的支援ができるのかということは,地域の問題ではありますけど,我々としても全くやる必要がないという考え方はとっておりません。
続きまして,休息を認めるということについての今後の見通しでございますけれども,現在も,学校と家庭の連携がしっかり取れていて,しかもフリースクールで行われている教育内容がしっかりとした内容であるということを学校長が認めれば,これは指導要録上の出席扱いという形で認めておりますので,そういった意味ではもう既に制度としては成り立っているということです。
他方で家庭学習だけということであると,これはそれぞれ学校として家庭学習の中身をどこまで確認できるのか等の課題がございますので,そこのところについては,今,直ちに出席扱いにするということにはなっていません。他方で家庭学習であっても,ネットあるいは通信教育等のIT等を活用してしっかりとした外部の視点が入っている教育内容を家庭でしっかり学習しておられるということであれば,学校長の判断で,その中身ももちろん確認しますし,ツールとしてのネットの教材ですとか通信教材等も確認して,学校で行う学習内容に準じた形でしっかり教育を受けておられるということであれば,これも出席扱いとすることができます。
そこの2つに当たらないものを今後どうするかということは,憲法の義務教育―当然保護者に掛かっている義務でありますけれども―という中身に関わる問題でございますので,近々にどうするということはなかなか難しい問題がございますが,いずれにしても我々は,不登校に置かれているお子さん,あるいは親御さんの心情にしっかり寄り添って,何ができるのか,どういう手厚い支援ができるのかという形で,今後もしっかり支援してまいりたいと考えております。
以上でございます。
【長谷川委員】 ありがとうございます。出席扱いについて制度上できるというところがすごく大きな前進だなと思うんですけど,実態としては,じゃ,不登校になっている10万人以上のお子さんたちが,どれぐらいそういうふうに出席扱いを受けて,フリースクールに通っているのかという数はありますか。
制度が始まったときに,何かそれが本当に有効に使われているのかどうかという点は重要と考えます。
【大濱児童生徒課長】 ちょっと古いデータで,平成29年度のデータでございますが,まず,教育支援センターに行かれているお子さんでありますと,これは8割以上のお子さんが出席扱いという形になっております。それから,いわゆるフリースクール,これは民間団体ですとか民間施設が入ってこようかと思うんですけれども,こちらにつきましては通われているお子さんの45.8%が出席扱いになっております。
ただ,制度としてあっても,実際それが認められていなければ,御本人,あるいは親御さんの利益になりませんので,我々としてはしっかり出席扱いにできる要件を明確に説明したり,あるいは趣旨を周知徹底させるように,日々会議等で学校現場にはメッセージを流し続けているところでございます。
以上です。
【長谷川委員】 ありがとうございます。すごく地続きの質問になってしまうんですけど。
【荒瀬分科会長】 すみません。今日は先ほども申しましたとおり4件議題がございますので,ちょっと一旦ここで切らせていただいて,後ほどまた時間の関係でお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。
では,次に移らせていただきます。議題(2)といたしまして,児童虐待対応に関する取組について,事務局からよろしくお願いいたします。
【大濱児童生徒課長】 資料2で御説明をいたします。まず,2ページ目を御覧いただきまして,千葉県野田市における事案についての御説明を簡単にしたいと思います。
これは報道等でも大変大きく報道されておりましたが,本年1月に女の子が亡くなられたということで,その事案の事実確認の中でいろいろなことが分かっていったという中身で,このお子さんは以前,学校からの通告により一時保護されたんですが,その一時保護が解除された後,平成30年1月に父親が,これはアンケートの存在をなぜ知ったのかというのは,ちょっとまだはっきりしないんですけれども,そのアンケートの写しを提供するように学校に要求いたしまして,学校現場としては反対したんですけれども,その後教育委員会の判断で,このお子さんが助けを求めて書いたアンケートの写しを,当該父親に渡してしまったということで,大変不適切な,あってはならない事案がございました。
それを受けまして,対応状況でございますけれども,直ちに野田市に副大臣をヘッドに幹部等を派遣し,その状況を確認するとともに,省内に副大臣を主査とするタスクフォースを設置いたしまして,4回議論をするとともに,学校現場においてこういった事案がないかどうかの緊急点検を行いました。それから厚生労働省と連携いたしまして,厚生労働省・文部科学省の合同プロジェクトチームを開催し,関係省庁がしっかり連携した形での施策を取りまとめたところでございます。
それから3月には,文部科学大臣が,お子さんに安心して声を上げてください,助けを求めてくださいという趣旨のメッセージを発表いたしまして,それにつきましてもホームページに公表したところでございます。
3ページ目は飛ばしまして,4ページ目でございますが,そういった取組の中で重要なものを御紹介いたしますと,(4)でございますが,こちらは要保護児童,本件の野田市の事案のような女の子の場合が当てはまってきますが,そういうお子さんが学校へ通っておられる中で,欠席の連絡が来た場合,これは欠席の理由がしっかりした理由と思われるようなものであっても,連続して7日以上休んだ場合には,市町村あるいは児童相談所に,速やかに情報提供するという枠組みを設定いたしました。
これは野田市の事案で,1月の当初,沖縄に帰っているというような説明で欠席があったことを学校は認知し,それについては連絡していたんですけれども,いずれにしても救えなかったという反省に立って,学校現場の負担も考え,7日と明確に日にちを決めまして,もう欠席が7日以上になれば速やかに通告するようにということで,仕組みを作ったところでございます。
5ページ目に行きますと,真ん中のところでございますが,こういった学校現場が,あるいは教育委員会が何をすべきかということを,分かりやすく手引きにまとめまして,特に学校現場がどういった形で児童虐待を発見するのかについて,着眼点ですとか気付きを与えるための,いわゆる判断作業という具体的なものを例示いたしまして,これをホームページ等に掲載し,今,各教育委員会に周知徹底を図っているところでございます。
手引きの内容は時間の関係上割愛させていただきますけれども,6ページにこの手引きの概要ということでお示しをしておりますし,全体だと大部になるんですけれども,簡易版ということで,参考資料にもお付けしております。
最後になりますが,7ページ目でございます。こういった痛ましい事案を受けまして,児童虐待防止対策の強化を図るための法改正が行われまして,こちらにつきましてはそれぞれ厚生労働省関係等の法改正事項もございますが,(4),こちらは学校の教職員について,その職務を遂行するに当たって知り得た児童虐待に係る児童の秘密を漏らしてはならないということで,守秘義務が新たに規定され,今回の野田市の事案では,アンケートを渡してしまったということがございますので,そういったことが二度とないように,この法改正で措置がされているものでございます。
これにつきましては,来年の4月1日の施行でございますが,学校教職員の義務として掛かっておりますので,誤りのないように,しっかり対応するようにということでの通知を既に発出しておりますし,私も含めて学校現場にメッセージとして,もう二度と児童虐待の悲劇を繰り返さないという意味で,会議等でも御説明し,今,学校現場への浸透を図っている最中でございます。
簡単ではございますが以上でございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。ただいま御説明いただきましたことに関しまして,御質問や御意見がございましたらよろしくお願いいたします。
では,まず八並委員,お願いいたします。
【八並委員】 八並です。この虐待防止に関しては教育現場を含めていろいろと研修が行われています。この資料で,文部科学省が作成している研修教材の「児童虐待防止と学校」は,今ネット上で公開されている平成21年作成のものだと思います。これは非常に体系的に作られたもので,児童虐待に関しては教育現場で参考になる資料です。しかし,実際には,教育現場では,見られていません。
この教材の存在を知らない,あるいはこれをうまく使われていません。「児童虐待防止と学校」に関しては,膨大な量の情報が,非常に体系的,具体的に掲載されています。その情報をどのように取り扱うのか,教育現場では難しいのだろうと思います。
また,平成21年に作成された教材ですので,先ほど野田市の虐待事例と関連しますが,平成25年公布のいじめ防止対策推進法とマッチングしていません。更に,特別支援教育は平成19年から始まっていますが,それも十分反映されていないというところがあります。このような教材を提供されるのであれば,最新情報を盛り込んで,なおかつ実際の学校現場の研修に使用可能な資料に作り直す方がよいのではと思います。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
長谷川委員,どうぞ。
【長谷川委員】 ありがとうございます。より予防的にアプローチをするという観点で,虐待を防ぐという観点も含め,よりよい家庭環境を作るというところで言うと,これは厚生労働省も主導してくださっているんですけれども,全ての親御さんにペアレントトレーニングをしっかりとする。例えばお子さんの問題行動一つ一つに,親はどう対応したらいいのかを事前にしっかり学ぶ。どういう環境作りを家でしたらいいか,どういう言葉掛けをしたらいいかということを,親御さんにしっかりと福祉の事業者が情報提供して,かつ,それを学ぶプロセスを通して,親御さん同士が子育てについて相談し合える関係性作りをするということを,うちの会社でもやっていますし,福祉の方では,よりそういったことを推進しようというような動きもあります。
これは障害児に限らず,全てのお子さんを対象に,是非親に対する情報提供や,ペアレントトレーニングの推進,コミュニティー作りというところは,非常に予防的なアプローチとして意義あるものと思っていますが,そういったところに対する現在の取組があるのかないのか,今後取り組んでいくというのがいいと思っていますが,御意見を伺えればなと思っています。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。後ほどお答えいただくということで,天笠委員,どうぞ。
【天笠分科会長代理】 失礼いたします。今のこの議題の件と,先ほどの1つ目の議題にちょっと戻ってしまうかもしれませんけれども,先ほどの議題の中で,やっぱり大変注目したというか,気になったそれというのは,趣旨の徹底について,各教育委員会等がどれほど対応したのか。
先ほどの資料を見ますと,そこには約16%ということで,その種の趣旨の徹底ということが,そのことに限らず大きな課題として存在しているんじゃないかということで,それが今度のこの今の議題の(2)についてもやはり非常に関わるところと,そんなふうに捉えたわけですけれども,それは先ほどありましたように,対応の手立てですとか,非常に迅速にそれに対応され,そして非常に迅速にその対応のための手立てですとか対策ですとか,そういうものが打ち出された,そういうふうに御報告を受け止めさせていただいたということなんです。
ただそのことが,どれほど現場に伝わっているのか,あるいはその情報が現場で共有化されているのか,共通の認識というところに至っているのか,そこのところが,この議題の(2)に限らず,私は今いろんなもろもろの教育行政とか政策の展開において,大きな課題を持っているところじゃないかと認識していまして,対策はとりました,そして伝えました,でも現場でそれがうまく受け止め切れなくてというあたりのところが現状であって,議題(2)についてのこういう対応,対策,それをどういうふうに現場において共有化していくのか,それを具体的な実践におろしていくのか,そのあたりのところについての知恵ですとかアイデアを,もう一段,衆知を集めて検討する必要があるんじゃないかと思います。
ちなみに,ちょっと前に私は学校評価のガイドラインについて,その仕事に携わらせていただいたんですけれども,例えばそのガイドラインがどれほど現場の先生に受け止められたかというのは,折々研修会等で伺わせていただくと,必ずしもそれが受け止められていない。例えですけれども。今回の場合のこの種の手引きがどういう状況になっているか,そこら辺を丁寧に現場とのやりとりのキャッチボールをしながら,学校に,先生方に,現場に共有していただくような,そういう手立て,働き掛けというあたりも,もう一段この対策,対応の中にはしっかりと位置付けて,具体的な対策というところまでここに示すような形の対策,対応ということをお願いしたいなと思います。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。この件に関しましては,ほかはよろしいでしょうか。
今,天笠先生がおっしゃいましたのも,御提言といいますか,これはなかなか難しい話で,一体どこがするのかということもまたありまして,ただ明確にしない限り,PDCAのCが機能しなくて,よって次のAにつながらないという感じになるのかと思うんですが,八並先生も,教材の提供の仕方についてのお考えも聞かせていただきたいという御趣旨ではないかと思いますので,お願いいたします。
【大濱児童生徒課長】 八並委員からの御指摘でございますが,これは御紹介いただいた平成21年作成の「児童虐待防止と学校」という,非常に大部なものでございまして,研修教材としてしっかりしたものができております。
今回の事案を受けて,我々が先ほど御紹介した手引きを作成するに当たりましては,こちらを参考にさせていただいて,あとは私の考えもあるんですが,余り分厚過ぎますと,結局もう飾っておいて終わりとなってしまいますので,必要最小限に,一番大事なところ,あとは一番失敗してはならないところが分かるように,簡潔にまとめるということを目標にやりました。
ただどうしてもいろいろ,これもあった方がいいんじゃないか,これも大事だということでどんどん増えてしまって,70ページぐらいになってしまったんですが,いずれにいたしましても,そちらの御紹介いただいた教材というのは,学校現場で知られていないということを作っている過程で我々も認知したところでございますので,そういった反省も踏まえて,今回の手引きについてはしっかりと学校の先生一人一人に届くような形にしようということで,やれることは限られてはいますけれども,会議等で紹介するですとか,あるいは私はいじめの行政説明で全国を回っておりますが,いじめだけにとどまらず,児童虐待の時間も少し取って,その手引きも配って,簡潔にここのところだけは学校現場で必ず守ってくださいという形で,見える形・近い距離で周知徹底を図っているところでございます。
あと,実は研修教材につきましては,ロールプレイングといいますか,いわゆる実際の事例を題材に,こういった親御さんのお申出,あるいはこういったお子さんの相談があったときに,先生としてどう動きますかという形でシナリオをある程度作って,それについてそれぞれが役割分担,あるいはこういう情報を受けたときにはこう動くという形で,シナリオに基づきロールプレイングで動いていくような,実践型の教材というものも必要であろうということで,今回の野田市の事案に似たような事例も集めて,しっかり学校現場,あるいは教育委員会主催で実践的な研修ができるように,現在作業しております。
いずれにしても手引きを作って終わりということを我々は一切考えておりませんし,これはもう不断の努力で,工夫も必要でございますけれども,先生一人一人がしっかりと中身を理解して,もしも迷ったり分からないことがあれば,手引きを参照していただくという形で,手元に置いていただけように作りましたし,今もその周知徹底を図っているところでございますので,我々はこれが終わりとは全く思っていませんので,御指摘のとおり,しっかり周知徹底を図れるように考えていきたいと思います。
それからあとは,天笠委員の大変重いお話でございますが,こちらも現場に趣旨を徹底するということの難しさを改めて我々は痛感したところでございますし,これはいじめ法の趣旨もそうですし,不登校の趣旨もそうですし,そういった意味で,先生方が学ばなければいけないことはたくさんございますけれども,なるべく絞った形で,あるいは簡潔に具体的に分かるような形で,先ほどの例ではありませんけれども,実践的な教材を作ったり,あるいは会議等の近い距離で御説明をして,分かっていただくということが大事だろうと思っていますし,あとはこれもしっかり検証して,できれば定量的な検証が一番よいのかとは思いますけれども,諦めるのではなく,しっかり伝わっているかどうか,趣旨が徹底されているかどうかということを確認しながら,またPDCAサイクルに基づいてしっかりやっていきたいと考えております。
それから長谷川委員の御指摘でございますが,おっしゃるとおりでございまして,非常に重要だと考えております。これは当然厚生労働省が主体となって,家庭にアウトリーチ型で支援をしたり,先ほどおっしゃったような地域のコミュニティーを作ったりということはやっておると承知しておりますし,文部科学省の中でも総合教育政策局において家庭への支援等の予算事業がございますので,しっかり取り組んでおりますし,私どもは非常に重要な観点だと考えております。
以上でございます。
【荒瀬分科会長】 どうぞ。
【浅田総合教育政策局長】 総合教育政策局長の浅田です。虐待の防止に関しては,家庭,保護者に様々なルートでアプローチしていく必要があると考えています。その重要な一つが学校を通じたルートですが,当然,それで全てをカバーできるわけではありません。今年8月に,家庭教育への支援のため,イラストも多用したできるだけ分かりやすいリーフレットを新たに作り,いろんな会議で配ったり,教育委員会にお送りして,是非活用してくださいとお願いしています。
この種のものは,配るだけでは駄目で,見て分かっていただかないと意味がありません。できるだけ見ていただけるように,何が一番大事なのかというポイントを短時間で理解してもらえるよう,いろいろと工夫したところです。
ほかの問題でもそうですが,保護者へのアプローチは非常に難しくて,考えられるあらゆる手立て,ルートからやっていかないといけないと思っています。当然,学校教育関係者や厚生労働省とも連携して取り組みます。
また,長谷川委員から御指摘がございました,特に障害のある子供たちについての理解や配慮も非常に大事です。特別支援教育課や厚生労働省などとも連携し,どういうやり方が最も効果的かということを常に考えながら,更に取組を充実していきたいと思っています。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
鶴羽委員,どうぞ。
【鶴羽委員】 今のお話を伺って感じることがあるのですが,今保護者というお話を頂きましたが,実際にこの子は虐待をされているかもしれないというSOSは,私は我が子から実際に聞いたことがあります。子供が小学校1年生のときに,やはりあの子が臭うとか,歯がかなり汚いとか,御飯を食べていないので給食の量がすさまじいとか,実際PTAの集まりのときに何人かで集まったときも,やはり我が子から聞くということが多いです。
でも,それをどうしていいのかが分からないというのも母親の心理です。せっかく子供から聞くんですけれども,担任の先生に言うのもどうか。告げ口をしているようで嫌だ。もしそれで何か我が子にあっても困る。そういうことはよくあります。それで子供から聞く,もしかするとという疑いがあるときに,学校以外でSOSが渡せるような場所があれば,言いやすいのではないかなと感じることもあります。実際にやはりそういうことというのは,どこでも子供から聞くというのが多いのではないかなとも感じます。
以上です。
【荒瀬分科会長】 浅田局長,どうぞ。
【浅田総合教育政策局長】 おっしゃるとおりだと思います。私自身,中学校の校長をしておりましたが,例えば中学校の教職員もいろんなところに目を配っています。子供たちの傷やあざは当然ですが,それだけではなく,表情の変化や態度の変化,服装,忘れ物,遅刻など,教育現場では大勢の目で様々なことに注意を払っています。
加えて,もちろん学校だけではなく,例えば児童センターなど,子供たちがよく行く場所,子供たちとの接点が多い場所,子供たちが気を許しやすい大人がいる場所などとの連携は常に密にとっていましたし,恐らく日本中多くの地域でそういう取組がなされていると思います。
それにしても,やはり子供の立場に立てば,虐待を隠そうとすることもあります。親を守りたいとかいろんな気持ちがあるのだと思います。それだけに,実際に見付けるのは非常に難しいのですけれども,子供と接する大人はできる限りアンテナを敏感にして,それを見付けなければいけないし,子供たちが心を開きやすいような環境や関係をふだんから作らなければいけない。難しくても,学校も含め,子供たちと関わるいろいろな機関,あるいは大人が,勉強しながらやっていくしかないのだろうと思います。
また,そういうことに意識や知識を余り持っておられない大人の方もいますから,そういった人たちにもできるだけ認識や危機感を共有してもらえるように,虐待は絶対に駄目なんだということを,いろんな方法で伝えていかなければいけないと思っています。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。ともかく何よりも,お互いに気遣って言わないままで,子供がどんどん困っていくという状況があるわけですから,やはり大人の責任として,それが学校であれどこであれどんどん出していく,それを受け止めた方も,ちゃんとそれを受け止めた後どうするか。特に学校に来たとき,学校っていろんなものを抱えますから,だからその際学校がどこに相談したらいいのかという,そのあたりのシステムがきちっとすることも大事だということを思いながら聞いておりました。
岩本委員と戸ヶ﨑委員,喜名委員が札を立ててくださっていますので,このお3人で一旦切らせていただきたいと思います。では,岩本委員,どうぞ。
【岩本委員】 趣旨の徹底というところで,資料1,資料2でも両方出てきたテーマだということで,ちょっとこれに関して1点だけ感じているところをお伝えできたらと思います。
私は県の教育委員会にいて,いろんな周知徹底しなきゃいけないことがあるという中で,多く行われているのが,県庁所在地に管理職を集めたり,担当教員を集めたりして,幾つも伝えなければいけないことが大量にある中で,一方通行で上から順番に資料の説明を駆け足になぞっていく。中にはお眠りされている方たちもいる中でやっているような光景を,もう何十回も見てきました。学習指導要領の趣旨のときもそういったことが多々あったと。
働き方改革の中で,わざわざ遠くから現場の人間を集めて,ある種余り学習効率の高くない場の中で伝えていくやり方も,やっぱり見直していかなければいけないのではないかと。そのときに,今回これからの教育の在り方と議論されている一つがやっぱりICTの活用ですよね。
企業等ではよくありますけど,eラーニングとかICTを活用して,わざわざ対面で一方通行でやらなくても,本当に伝えなきゃいけないところ,伝わったかどうかを,分かるようにするという意味においては,ICTの中での小テストじゃないですけれども,本当にそれが分かっているのかというところまで含めて,そういった形で,現場の教員もわざわざどこかに行かなくても短時間でも受けられる。
定量的に全国でどれだけの人たちがちゃんと受けているのか,どこまで理解しているのかということって,ICTを使えば,アンケートでどのぐらい理解していますかとかやらなくてもすぐ分かるところですので,すぐに全部のことができるとは思いませんけれども,そういう形での伝え方だとか,今後検討されていく必要があるのではないかなと思いました。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
では,戸ヶ﨑委員,お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】 1つは,不登校等も含めてですけれども,子供たちへのいろいろな支援を行っていく中で,学校や市長部局と教育委員会とで共有していることとして,いかに困っている親が多いかということです。先ほど,ICTを活用したというお話がありましたけれども,相談体制としてSNSは多くの種類でやってみようということで,試行的ではありますが,フェイスブック,LINE,ツイッター,電子メールを相談業務に使えるように導入したところ,親に相談できないだろうなと思える内容や,親が対応に困っているだろうと思われる相談も少なくありませんでした。
また,先ほどの長谷川委員からのペアレントトレーニングについても,本市では試行的,というのは,実際に教員が行うのは,正直ハードルが高い部分はあるんですけれども,やってみたら,保護者の感謝の言葉がたくさん寄せられたというのがあって,来年度はできれば全ての小学校でやってみようということになっています。その効果として顕著だったのが,保護者のストレスが改善されたということです。
また,子供に対してついつい叱ってしまいがちだったけれども,肯定的な働き掛けが上昇したなどがあげられました。これらの効果は児童虐待等にも効果がある方法なんだろうと思います。保護者支援にもつながりますし,結果的に子供の支援につながっていくことかなということで,大変良い方法だと感じました。
もう一つは,先ほど来の不登校や児童虐待,後で出てくる学校安全の話にも関わることなんですけれども,いずれも教育委員会の立場で実施していくということになると,縦割り行政をいかに打破していくかということが大切であると思っています。
本来的に縦割り行政のメリットというのは,最も効率的にその組織を運営するということであったはずなんですけれども,「シン・ゴジラ」という映画でもあったように,それはうちの所掌じゃないと仕事をはね返す隠れみのとなってしまっているという実態があります。
そういう中にあって,どう解決したらいいんだということで,たまたま先日の本市の総合教育会議の中でもこれが話題になったんですけれども,トップである首長のプライオリティーセッティングを明確にして共有し,徹底されていることがまず大切です。また,ある意味究極の縦割りでチームを組んでやっていくということ,更に,その縦割りから横をつなぐ,横串を刺すような組織だとか人材が絶対に必要になると思っています。では,学校はどうかというと,働き方改革とともに,分業体制が進んでいます。かつて私が初任の頃は,教師たるもの五者たれと指導されました。五者とは,学者,医者,易者,役者,芸者で,そういうものを全てやるのが教師だということで,言うなればマルチプレーヤーというんですか,そんな教師によって献身的に全人的な教育で,今日の日本が支えられてきたんだろうなと思います。しかし,最近は,様々なカウンセラーをはじめ,専門的な方々が学校に入ってきています。
そんな中にあって,特に課題になっているのが,これらの方々は常勤,常駐ではないことです。専門の人も結構なんだけれども,学校には常勤,常駐の人の数を増やしてもらいたいというのが,切実な願いなんだろうと思います。
多くの専門家,スペシャリストが学校の中に入ってくるとなると,その人々をつなぐために,伝える業務をいかに的確にやっていくかということが重要になってきます。そこで言いたいことは,学校のチーム力を高めるような科学的なシステムづくりや,あとは多くの非常勤の専門家などを一元化して,電子カルテや遠隔システムなどを活用して学校支援をしていくようなことを進めていけば,間違いなくこれは予算削減にもつながっていくのではないかと思います。
更に,校内の様々なスタッフをつないでいくような,言葉は適切かどうか分かりませんけれども,スクールビジネスマネジャーというか,そういうマネジメントできるような人を配置して学校のチーム機能を本格的に強化していく必要があると思います。欲を言えば常駐してもらえるのがなおよいのは言うまでもありません。
長くなりましたけれども以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
すみません,あとまだ大きな議題もございまして,これも非常に重要なんですけれども,ちょっと申し訳ありませんが,手短に。牧野委員はよろしいですか。
【牧野委員】 後でいいです。
【荒瀬分科会長】 後でいいですか。すみません,申し訳ありません。
じゃ,喜名委員で一旦この議題は切りたいと思います。じゃ,よろしくお願いします。
【喜名委員】 小学校の立場からのお話をさせていただきます。この児童虐待について特にお話しすると,学校現場,特に教員の意識も,それから管理職の意識もかなり変わってきているというか,かなり敏感になっているというのが実際のところだと思います。そういう意味で通告件数というのがかなり増えてきているのではないかなと思います。
もう一つ,児童相談所の1つ手前というんでしょうか,行政が所管する子供家庭支援センターなどに頻繁に連絡をするとか,情報共有するということで,未然防止にもつながっているということがあると思います。また地域の児童,民生委員さんとか,そういう方々の活躍もかなりあるのではないかなと思います。
ただ1つ問題は,やはり周りの人たちというのでしょうか,学校からの通告と合わせて,地域,近隣の人からの通告というのも増えているわけですけれども,その意識をもっと高めていかないといけないのかなと思います。お子さんをお持ちの方は隣のうちの子がすごく𠮟られているということを,児童相談所とか子供家庭支援センターに言ってくださるんですけど,なかなかそういう社会になっていないというところが課題だと思います。
だから学校を通していろんなことを伝えることもそうですけれど,これは文科省の範ちゅうではないということもありますが,社会全体がこのことについてもっともっと興味を持ってほしいなと思います。今回の裁判の様子とかを見るたびに,そこはどうだったんだろうということをとても強く感じます。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
それでは,次の議題に入りたいと思います。3番目の議題といたしましては,学校安全に関する取組についてです。こちらも事務局からよろしくお願いいたします。
【三好男女共同参画共生社会学習・安全課長】 総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課長の三好と申します。よろしくお願いします。資料3に基づきまして御説明させていただきます。
学校安全ということでございますけれども,子供たちが学校で安全・安心に学ぶということは非常に大事なことでございますし,それから子供たちが自分の力で生きていけるようにということで,安全教育の重要性もまたうたわれているところでございます。こういった観点で,防犯,あるいは防災,交通安全といったことについて,学校保健安全法,あるいは各学校における学校安全計画に基づきまして,学校安全の取組というものを推進しているところでございます。
しかしながら1ページ目にございますように,今年に入りましてもいろいろと全国各地で痛ましい事件,事故ということは発生しているところでございます。例えば上の見出しのところに書いてございますが,今年の5月には滋賀県大津市におきまして,県道で歩道に突っ込んだ車が保育園の園児2名を死亡させたという交通事故がございました。
それから5月28日には川崎市の登戸におきまして,スクールバスを待っていた私立の小学校の児童さんの列に男が突っ込みまして,小学校6年生の女の子,あるいは保護者の方がお亡くなりになるという痛ましい事件があったわけでございます。
こういったものを受けまして,政府全体として,学校安全に関する新たな対策というものを検討し,取りまとめておりますので御報告をいたします。
まず交通安全の関係につきましては,6月18日の関係閣僚会議で,未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策というものが取りまとめられております。
文部科学省関係のものを抽出しておりますけれども,例えば1つ目の〇にありますように,子供が日常的に集団で移動する経路の緊急安全点検の実施ということで,今回事件が起こりましたのは保育園だったわけですけれども,いわゆる園外のお散歩コースに位置付けられているところで事故が起こってしまったということでございまして,全国同じような形で集団移動経路について関係者が点検して,その対策を含めて報告をするという取組を行っております。これは現在,点検結果の集約をし始めているところでございます。
次に,地域ぐるみで子供を見守るための対策ということでございますけれども,交通安全ということにつきましては,これまでスクールゾーンの取組を実施してきているわけありますけれども,保育園につきましても同様に,キッズゾーンというものを設けて,その推進を図っていこうということをこの対策の中で決めております。それからこのスクールゾーンにつきましても,専ら小学校などで実施されていると思っておりますけれども,そういったものを保育園も含めて新たに設定することについても取組を促していこうということでございます。
それから3つ目,これは以前より継続して行っておることでございますけれども,小学校の通学路の合同点検ということで,これは過去毎年度,文部科学省,警察庁及び国土交通省が連携して,危険箇所を抽出して,その対策というもの,例えば交通規制を作るとか,あるいはガードレールなどを設定するとか,そして見守り活動を充実させるといったような方策も含めて,点検を毎年続けているところでございますが,こういったものをしっかり行っていこうということでございます。
そして2番目,川崎市の事件を受けた対応につきましては,こちらも6月25日の犯罪対策閣僚会議で対策を公表しております。川崎市における児童等殺傷事件を受けた政府の取組ということでございますが,こちらも文部科学省関係のものを抽出しております。まず1つ目,通学路の安全確保ということで,こちらも集合場所の危険箇所の点検です。
これまでどちらかといいますと,子供が通学路で1人になってしまう,周りの大人の目が届かないようなところをチェックしていこうということで取組を進めておったんですが,今回は,子供たちがむしろ大勢集まるところ,そして衆人環視のところで事件が起こっておりますので,そういったところがどういうところがあるのか抽出して,そういった情報を警察も含めて関係者で共有するという取組を始めているところでございます。
それから警備とか見守り活動の強化ということで,なかなかあのような刃物を持った暴漢が襲ってくるということになりますと,ボランティアだけで対応するのはなかなか難しいところもございますので,そこは警察とも連携して,重点的なパトロールなども組み合わせた形で,学校側としてもスクールガード・リーダーの増員でありますとか,あるいはそういった見守り活動を行う際の装備品というものも配備していこうということでございます。
そして防犯教室の推進ということで,これもとにかく襲われたら逃げるといったようなことです。実践的な防犯教育の推進というものをやっていこうということです。
そして,今回私立の小学校でありましたので,通学路が非常に長いということで,保護者の不安解消に向けた取組というものも進めていく必要があるだろうということでございます。
不審者情報の共有と迅速な対応という点につきましては,警察が今,不審者情報があった場合に,周囲の小学校と情報を共有しておりますけれども,そういったものを中学校も対象に含めるという方針を決定しております。
そしてその他の取組ということで,私立学校を含む学校安全確保対策の推進でありますとか,あるいは安全確保に関する調査研究というものを進めていこうということでやっております。
2枚目,3枚目は,今申し上げましたそれぞれの対策の全体像を詳細に書いているものでございますので,特に2枚目は実際に行っております合同点検の状況でありますとか,あるいはそれを受けた取組例といったものも写真で入っておりますので,また御参照いただければと思います。
3ページ目が,川崎市の事件を受けた取組の全体像でございます。
4ページ,これは最後でございますけれども,学校安全に関する予算をいろいろ盛り込んでおりますけれども,その中で1つ御紹介ということで,地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業。箱が4つ並んでおりますが,左上にありますように,スクールガード・リーダー,これは地域の見守り活動を行うスクールガードという方で,全国50万人か60万人ぐらいボランティアの方がいらっしゃいますが,これのいわゆる指南役といいましょうか,指導役をする方々で,警察のOBでありますとか,あるいは学校の校長先生のOBなどがなっていただいておりますが,こういったスクールガード・リーダーの体制を,1,700人体制から4,000人体制に増員を図る。そして左下の箱にありますように,そういったスクールガード・リーダーの方々に対する装備品,例えば防刃ベストでありますとか防刃グローブ,こういったものの配備をこの予算の中で進めていきたいと考えております。
簡単でございますが以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。学校安全に関する取組について御説明をいただきました。この件に関しまして,御意見,御質問がございましたらお願いいたします。
では,八並委員,お願いいたします。
【八並委員】 八並です。学校安全に関しては,かなり古い話ですが,平成9年の神戸市での連続殺傷事件,平成13年の大阪教育大学附属池田小学校の殺傷事件を受けて,文部科学省も学校安全に関して推進してきました。そのため大半の教育委員会は危機管理マニュアルを作成して,指導しています。
安全マップの作成,通学路の確認も行ってしかし,私が一番重要だと思うのは,子供が一人の状況下や未経験の危機に直面したときにどのように対応するかということです。つまり,子供自身の「危機回避能力」を育成しなければ,スクールガード・リーダーなどの増員や安全マップでの通学路の点検をしても十分とはいえない。極端に言えば,いつどこで,刃物を持った相手と出会うかわからない。しかも相手とは,物理的に体格が違う。その危機的状況で,どうするのか。
そういう意味では,外側のガードではなく,むしろ子供たち自身に「危機回避能力」を育成しなければ,無理ではないかと思います。典型的な危機回避の方法は,よく知られているものとして,「いかのおすし」があります。知らない人についていかないなど,標語のようですが,小さい子供であれば大きな声を出すこと,相手から逃げることがひじょうに有効です。そのような危機からの逃げ方を,教える必要があると思います。
今後,子供に関しては,自分一人のときや友達といるときに,刃物を持った相手と遭遇するなど危機的状況下で子供がどのようにその危機から脱するか。子供の危機回避能力をもう少し正面から取り上げて,育成していく必要があるように思います。ただし,道徳教育と危機管理は,二律背反的な要素があるので,指導上難しい点があると思います。
また,先生方についても,さすまたが置いてあり模擬的な練習もしますが,実践で通用するかというと疑問です。したがって,教員側も実践的な危機回避能力の育成が同時に必要であると思います。要するに,子供と教員の「危機回避能力」をどのように育成するのかという政策観点が必要だと思います。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
では,渡邉委員,よろしくお願いいたします。
【渡邉委員】 では,3点ほど意見と要望を述べさせていただきたいと思います。
今回のこの大津の事故,そして川崎のこの事件を受けて,それをきちっと対策を立てられたのは,非常に意義があると考えております。特に今回はどちらも,例えば最初の大津の方は園外ですよね。
川崎の場合も通学路,通学中ということで,学校の外で起きているわけなのですが,通学路の対策といいますと,昨年,大阪北部地震の例のブロック塀の問題がありました。あれは全国の学校のブロック塀の状況を調査したと思うのですけれど,どうしてもそのときはブロック塀だけ見てしまうというところがあるのですが,実際のところ通学路というのは,今回なら交通事故であったり犯罪被害とか,これらも全部含めているのです。
今年の3月に文科省から,「『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」という冊子が出ましたけれど,その中で通学のことについて,管理の面からのお話ですが,こう書いてあります。「通学の安全管理については,交通安全の観点だけではなく,誘拐や傷害など犯罪被害防止という生活安全の観点や災害発生時の災害安全の観点からも対策が必要である」と書いているわけですけれど,何か1つのところというだけではなく,やはり全般的に安全を確保するという視点を持って取り組んで,それも単発じゃなくて,継続的にやっていくという取組が必要ではないかなと思います。もちろん今もうやっているとは思うのですけれど,そういう視点も入れていただければと思います。
加えてやっぱり登下校ということだけじゃなくて,子供たちが学校の外に出るというと,例えば校外学習に出るということがあるわけです。過去には例えばまち探検に出ていたところ,そこで交通事故に遭ってしまったということもありますし,校外学習を含めた学校外,通学,登下校だけではなくて,そういった視点での安全確保というのも併せて考えていければいいかと思います。
2点目ですけれど,3ページ目の通学路の安全確保にあります,2つ目の〇で,「地域の連携の場」を活用しつつ,各学校が主体となりというところはなかなかそのとおりだと思うのですが,学校が主体となって中心になるとなると,やっぱりそれなりの負担も掛かります。
全ての教職員がそういった専門的な知識があるというわけではないので,先ほども教育委員会のことが話題になっていたと思いますが,やはりもう少し学校の設置者,教育委員会がリーダーシップをとってほしいということです。
また,これは例えばマニュアルにしてもそうですが,学校が作ったマニュアルをちゃんとチェックしてもらうということももちろんあるかと思いますので,そういうことを,もう少し文科省からプッシュしてほしいということが一つ要望です。
3番目は,この安全の問題となりますと,学校任せじゃなくて,やっぱり保護者がすごく重要になってくると思うのです。そのことも,この今回の取組の中にも書かれてはいるのですけれど,保護者がもっと主体的に,特にその通学路のこともそうなのですけれど,学校に全て任せるということには当然できません。
そうなると,もう既にやっているところもあると思うのですけれど,保護者の方がどう子供たちの安全確保のために取り組んでいくかということを,もう少し何か考えて進めていく必要があるかと考えています。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
では,川越委員,お願いいたします。
【川越委員】 この学校安全も含めて,先ほどの幾つか上った案件についても,なかなか学校現場に伝わらないということが課題として挙げられておりました。そのことについて自分自身,学校を預かる者としての反省も含めて,意見を述べさせていただければと思います。
やはりポイントは,私たち学校長が自分の言葉できちんと,その制度の趣旨ですとか,また施策の目指すところを分かりやすく教員や保護者に語っていくことかなと思います。そして教員に分かりやすく伝える,保護者に分かりやすく伝える,そして場合によって子供たちに分かりやすく伝えるというのは,校長の大切な仕事であり,ある意味,校長による授業であると思うんです。
制度や施策について様々な資料を作っていただいております。しかし,その資料は,全国共通どこでも使えるように作られているわけですから,分かりやすく伝えるためには,きちんと自分の学校の先生たちの実態を考えて,あとは保護者の状況を考えて,そして提供いただいた資料を教材として,十分教材研究をして,きちんと自分の言葉で伝えていくというのが一番大事なことですし,仲間である全国の中学校長にもこのことを伝えていきたいなと思います。
限られた経験則ですが,教育行政の経験もあります。そこで思ったのは,行政は制度設計とか制度改正はできますけれども,教員の意識を変えることはできない。変えることができるのは,日々,教員と向き合っている校長先生であるという結論に至った経験がございます。ですから学校現場に伝わらないという御指摘に対する反省も含めて,きちんと本日学んだことを,自分の学校の教員,保護者の方々に伝えていきたいなと思っています。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
では,田中委員,牧野委員の順でお願いをいたします。
【田中委員】 大津の事件について,ちょっと私見を述べさせていただきます。ここでも「未就学児を中心に子供が日常的に集団で移動する」という文面があるんですが,少なくとも幼稚園として認可を受けている施設が,日常的に集団で移動する行動をとることはないです。私どもの園で言いますと,年に1回か2回,近くの小学校との交流で,近くの小学校まで歩いていくということはありますけれど,これは要は他省庁の話になってしまいますが,園庭を持たなくても教育機関だという名称で認可をしてしまっている。
ですから,幼児教育は環境による教育ですから,その環境を確保するために,毎日施設から出て,その場所に行かなければならない,こういう教育をするための便法というところを現在認めてしまっていることが,私は国家的な問題だと思うんです。やっぱり教育に関しては文部科学省が責任を持つんだということです。他省庁であろうとも,教育に関する責任はどうあるべきなのかということをしない限り,日常的にこういうことをしている。
例えば昔々ですけれど,ある保育所がほかのところに遊びに行って,バスに子供を乗せたまま,確認しないで熱中症で死んじゃった。こういう事件があったわけですけれど,これは日常しているからそういう点検をしないんです。遠足でたまにしか出ないところだったら,必ずこれはします。だから日常的にこうなってしまっている構造に子供を追い込んでいて,教育の場じゃない場所で教育ということを主張することを,私はもう一度この委員会で文部科学省が見直すことを提言していただきたいなと思います。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
一般的に,例えば高校生が外に出ていくという場合も結構ある話だと思いますので,そういったことも含めて全体的に見ていくことが大事ではないかなということで承りました。ありがとうございました。
では,牧野委員,お願いいたします。
【牧野委員】 これまでの議論の私自身の受け止めなんですけれど,結局教育現場の中だけでこういった課題を解決していくというのは,なかなかやはり難しいんじゃないかという気がしております。
地域全体の危機管理という考え方でこれを捉えていった方が恐らくいいだろうと考えたときに,先ほど戸ヶ﨑委員から総合教育会議の話がありましたけれど,やはり首長と教育委員会が連携してこうした時々の課題に当たっていくということは,既にもう始まっているわけですから,文科省におかれましても,簡単に申し上げますと,私どもの市長会なり町村会と連携をする形で,こうした地域の危機管理を検討していくということを考えてほしい。
県の教育委員会にとにかく通知をすれば,それで仕事は終わったといったことではないはずでありまして,様々なアプローチによってこの課題解決を図っていく必要がある。これが自分の仕事だという枠の中にとらわれるのではなくて,むしろそこからもっとウイングを伸ばして,様々なアプローチによってこの課題解決を図っていくんだという姿勢を見せていくことで,文科省の立ち位置というものは,私は変わっていくんではないかと思っております。
是非そうした,特に市町村,首長たちとの連携を考えて,こうした課題に当たっていただきたい。できれば市長会や町村会の場に出向いていただいて,こうした話をして,首長たちと積極的な意見交換をしていただきたいということをお願いしておきます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
それでは,今札を立てていらっしゃる方はいらっしゃいませんので,この件もここで止めたいと思います。
今出ました御意見で,何か文科省,よろしいでしょうか。
では,次の議題に入ります前に休憩を取りたいと思います。後ろの時計で,今2時33分頃ですので,2時43分まで休憩をしたいと思います。
( 休 憩 )
【荒瀬分科会長】 それでは再開をしたいと思います。よろしくお願いいたします。
では,議題の(4)といたしまして,新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会の議論の経過について,まず御説明を事務局からお願いいたします。
【浅野初等中等教育企画課長】 それでは,資料4に基づいて御説明させていただきます。4月17日の諮問を受けまして,前回,5月のこの分科会で特別部会を設置いただいて,6月,それから7月,そして9月と3回にわたってヒアリング等を行いながら審議を進めていただきました。
次の2ページ目でございますが,次回,10月25日を予定しております。今回の分科会の御審議を踏まえて,今後,10月,11月と特別部会を開催して論点の取りまとめを行い,この分科会に12月13日に報告をする予定となってございます。
次のページは現在の検討体制を書いてございます。
次の資料5をごらんいただければと思います。前回の特別部会で議論,審議をいただいた論点の整理でございます。前回の御審議の御意見を踏まえて,特別部会長の方で修正をいただいたものでございます。
今回,この新しい時代を見据えた教育の将来像の方向性ということで,イメージをまずセットいたしまして,1つ,育成を目指すべき資質・能力ということで,自立した人間として,主体的に判断して,多様な人々と協働しながら新たな価値を創造する人材の育成であるとか,変化を前向きに受け止めて,豊かな創造性を備え,持続可能な社会の創り手として,予測不可能な未来社会を自立的に生き,社会の形成に参画するための資質・能力を一層確実に育成するといった今回の諮問等も踏まえて,子供の学びについては,多様な子供たちを誰一人取り残すことのない,個別最適化された学びを将来実現していくということで,先端技術の活用でございますとか,先生方が,個々の児童生徒の学習状況を把握して支援を行うとか,それから,それぞれの子供の生活や学びの課題を早期に発見するとか,学校と社会とが連携・協働することによって,探究的・協働的な学びを実現して,STEAM教育などの実社会の課題解決の教科横断的な学びが提供されているとか,それから高校で普通科をはじめとする学科において,特色化・魅力化を実現しているといったようなこと,そして次に,こういった子供の学びを支える環境として,将来全国津々浦々の学校において質の高い教育活動を実施可能とする環境を整備するということで,教員養成,採用,免許制度も含めた方策を通じて,バランスのとれた教員集団構成,それから多様性があり変化に柔軟に対応できる教師集団を実現して,専門スタッフとチームとして運営する学校を実現する。
教師が生涯を通じて学び続け,技術の発達や新たなニーズなど環境が整備されていること,それからICTを基盤とした先端技術や教育ビッグデータの活用環境が整備されているとか,それから人口減少が加速する地域で,自治体間の連携,小学校と中学校との連携や教職員の配置などの多様な工夫を通じて,魅力的な環境が実現されている,こういった将来の教育の姿を見据えて,2ページ目でございますが,現在ICT,それから教科担任制については後で御説明させていただきます。
教育課程の在り方については教育課程部会で現在検討しております。教師の在り方については教員養成部会で検討しております。高等学校教育の在り方については高校ワーキンググループ,外国人児童生徒等の教育の在り方については有識者会議,そして特別支援教育の在り方についても有識者会議,それぞれの検討の場で検討を並行的に進められている状況でございます。
3ページ目でございます。前回,特に特別部会で集中的に議論が行われましたICT環境については,こちらに記載がございますように,一人一人の個別の学習計画の活用などを検討し,学習者が自身の学びを振り返ることが効果的じゃないかとか,それから学びにおける時間・距離などの制約を取り払い,個別に最適で効果的な学びや支援,可視化が難しかった学びの知見の共有や,校務の効率化などが考えられるというということで,学校のグランドデザインや学習環境の在り方を見据えて,これまでの取組との融合や複合を意識しながら進めていくことが必要ではないかといったようなこと,遠隔・オンライン教育の活用,AI技術を活用したドリル,センシング技術や学習ログの活用など,先進技術を活用する手法や効果,留意点としてどのようなものが考えられるかということ,それから,ここも審議の中でちょっと強調されたところでございますが,対面での教育を通じ,社会性等を身に付けさせることも重要であり,児童生徒同士,児童生徒と教師が顔を合わせ,学級で共に学ぶことの意義について再確認することが必要ではないかといったこと,それからAI技術を使って知識の定着に係る授業期間を短縮して,STEAM教育をはじめとした課題解決的な学習に,より多くの時間を掛けることができるんではないか。その際,学年を超えた学びを行うことについてどう考えていくのか。
それから,教師の在り方や果たすべき役割,教員養成・免許・採用・研修・勤務環境・人事計画等の多様な外部の人材の活用をどうあるべきと考えるのか。
そして次のページでございますが,特にこれはヒアリングでの堀田先生の御意見も踏まえて,現状の情報化の致命的な遅延は,学習環境・職場環境として大きな問題であり,抜本的な改善が必要である。特にこういう状況の中,ICT環境や先端技術の活用状況の差による教育格差がないように,国と地方の連携の下,ハードとソフト両面から,自治体や学校等の取組のインセンティブが働くような具体的な支援策など,国の取組を早急に進めるべきではないかということで,児童生徒1人1台のコンピュータ端末の整備への支援等の具体的な課題について幾つか列挙してございます。
続きまして,5ページ目でございます。前々回の特別部会で,これも集中的に少し議論が行われまして,こちらに書いてございますように,1つ目のところでは,小学校高学年の児童の発達の段階,外国語教育をはじめとした教育内容の専門性の向上などを踏まえると,小学校高学年からの教科担任制の本格的導入を検討すべきではないか。その際,一律的な方式ではなくて,各学校の実情を踏まえて教科担任制が実施できる在り方が必要なのではないか。
それから2つ目でございますが,その教科担任制の導入に当たって,教員定数,教員養成・免許・採用・研修など,こういった義務標準法や教育職員免許法等の在り方を含めてどう考えるか。教員定数の改善,配置の工夫,教科指導の専門性を高める養成・研修の仕組み,こういった構築,それから免許制度の検討が必要ではないか。
そして3つ目に,特に中学校における教師の在り方や小学校と中学校の行き来の在り方,それから小学校間,小中学校の連携,こういうものをどう考えるか。特にこの点も審議の中で御指摘いただきましたが,小規模校において高学年段階の教科担任制が実施可能となる仕組みをどう構築するか。
4つ目でございますが,小学校における教科担任制の導入によって,教科指導の専門性や授業の質の向上,教師の負担軽減が図られて,児童の学力の向上,複数教師による多面的な児童理解による児童の心の安定が図られ,小学校から中学校への円滑な接続などが実現できると考える。どのような効果をより発揮するための方策が考えられるか。
最後に,CBTなどを活用して,児童の知識・技能の習得状況を把握することが必要ではないかということで,幾つかこういった形で,特に先端技術の活用と,この教科担任制の在り方については,少し具体的に整理をさせていただいているところでございます。
以上でございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。今,新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会の議論の経過,とりわけICT,そして小学校高学年の教科担任制についての説明を詳しくしていただきました。ただいまの御説明につきまして,御質問,御意見等をお願いしたいと思います。また札を立てていただくということでよろしくお願いします。
朝日委員,お願いいたします。
【朝日委員】 全国特別支援学校長会の朝日と申します。今回から参加ですので,今までの議論と少しずれている部分があるかもしれませんけれども御容赦ください。主に2点でございます。
1点目は,1ページ目のこれからのイメージ,大変すばらしい言葉が盛り込まれています。「多様な子供たち」,「誰一人残すことのない」,「個別最適化」,「全国津々浦々」,「質の高い」,これが実現できるとなると,非常に日本の教育はすばらしいものになる。そこに個別支援が必要な子供たちがきちんと対応になっているということはすばらしいと思っています。
しかし,私も校長2校目,特別支援教育も導入されて12年ですけれども,実際に学校に行ってみると,日本の教育は,一言で言えば沸かし立てのお風呂のように思います。つまり教育改革などが様々進んで,学校はそれを受け止めようと思って一生懸命やる。実際学校の中に手を突っ込むと,非常に熱く燃えている集団がある。しかし1回中に入ってみると,お風呂の底はまだぬるま湯,場合によれば水であるということでございます。
先ほど川越委員から,校長はそれをきちんと自分の言葉で伝えるべきだということをおっしゃいましたけれども,正に表面だけ熱い,表面だけ,理念だけすばらしいものが,これからの10年また進むのではなく,そこをしっかり,お風呂の中をかきまぜることができるような校長会でありたいと思っています。
2枚目のところで,言葉のことでちょっとこだわってしまうのですけれども,「基盤的な学力」という言葉でございますが,新しい学習指導要領は,学力という言葉が前面には余り出ずに,消えたということでありませんが,資質・能力ということで,学校現場でも,学校だけで使う学力ではなくて,将来にわたって生きる資質・能力なんだということを教員たちに伝えてきました。ここで改めて「基盤的な学力」という言葉にまとめること,そこは大丈夫なのかという疑問を持ちました。
例えば学習の基盤となる資質・能力とか,学習の基盤となる知識・技能では駄目なのかということ,併せて言葉でこだわってしまいますけれども,特別支援教育の在り方で「インクルーシブな環境」という言葉も若干気になりました。かつての答申ではインクルーシブ教育システムの中で「インクルーシブな社会」という表現はありましたけれども,「インクルーシブな環境」といったことで一般国民の方がイメージできるのかと思っています。
特別支援学校の立場で言えば,これからは特別支援学校に入ったり,あるいは小中学校に転出したり,そういう学びの連続性がどんどんできるであろう。通常の小中学校,高等学校にも障害のある子供たちがたくさん出ていって適切な支援を受けながら,必要に応じて特別支援学校に来る。そういうような部分もありますし,交流及び共同学習,籍はきちんと特別支援学校や小中学校に置くけれども,共に学ぶ場所を行う。その辺がうまく伝わっていけるように,例えば,全ての学校において障害のある子供たちへの環境や指導の方策の充実のようなことではないかなと思いました。
最後に,今,この非常に一面ですばらしい言葉が並んでいるところの具体的な検討が入り,私も教育課程部会,教員養成部会,特別支援教育の有識者会議に出させていただいておりますけれども,それぞれ検討していることの串刺しになる部分がどこなんだろうと。先ほど戸ヶ﨑委員が,チーム力を高める科学的システムが必要であろう,本音を言えば常勤が欲しい。本当にそうです。本当に回していけるものがない限り,いろいろな施策が始まったとしてもできない。
ですので,この■がたくさん並ぶ中の最後か,まとめかに,これらをきちんと受け止める学校経営の在り方であるとか,学校の在り方であるとか,そういうものが必要ではないかなと思いました。
科学的システムというのは,今,日本のラグビーが強いのは,恐らく科学的なトレーニングとメンタルコーチを入れるとか,本当にすごいことをやっていると思うんです。恐らくこのたくさんのポチポチが進む中に,科学的にそれを学校の中に入れて,お風呂が全部温まるようにするためのシステムを1本入れてほしいなと思いました。初めての参加で,ずれていたら申し訳ございません。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。たくさん札を立ててくださっていますので,橋本委員,岸田委員,道永委員,西橋委員,長谷川委員,喜名委員,篠原委員の順でお願いをしたいと思いますが,今,私が漏らした方はいらっしゃいますでしょうか。鶴羽委員。済みません。じゃ,今申し上げた順でお願いしたいと思います。
【橋本委員】 今回の義務教育等の見直しの中で,私が特に重点かなと感じているのは,これまでの一律,一斉の学習のシステムというものを,先端技術等の進展も踏まえて,いかに個別に最適で効果的な学びへと変えていくかということかなと思っています。そこで,論点の3ページ,ICT環境等の効果的活用というところなんですけれども,下から2つ目に,「AI技術を活用したドリル等の活用で,知識の定着に係る授業時間を短縮し」とありまして,その後に,「その際,学年を超えた学びを行うことについてどう考えるか」とあるんです。
確かに授業時間が効率化されて進んでいけば,学年を超えた学びにつながるということがあり得るわけですけれども,そもそもはその上に,個別に最適で効果的な学びや支援について書いてありますが,個別に最適な学びというものを追求していく中で,この学年を超えた学びにぶつからざるを得ないんじゃないかなと思いますので,ここを本当にどう考えるのか。
ここでさらっと書いていますけど,非常に大きな意味合いがあるんじゃないかなと思います。今の学習指導要領というのは,特定の学年でどういうことを学ぶという枠組みになっていますが,そこにも影響し得る大きな問題かなと思います。だからどうしたらいいのかということではありませんけれども,単にこの下から2つ目で,学年を超えた学びというものを捉えるだけでなくて,やはり個別最適化と結び付けた課題として考えていくべきじゃないかなということが1点です。
それからもう一点は,その次の4ページにいろいろと,国の取組を早急に進めるべきはないかということで,具体的な支援策を示していただいております。書いてあるとおりかなと思うんですけど,その中で,ICT環境が整備されますと,実際に活用するに当たって,技術面での不具合等,それに対応するような支援策も必要になってくるのかなと思います。
これについては個々の学校の教員で対応するというのはなかなか難しいわけですので,高い専門性を持った,ICT活用のためのアドバイザーのような人材を,例えば教育委員会から派遣できるといったことが大切かと思います。そういった面で国の支援の拡充というものも,ここに入れていただきたいなと思っております。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
では,岸田委員,お願いいたします。
【岸田委員】 岸田です。よろしくお願いします。私も,この多様な子供たちを誰一人取り残すことないというところで,私の意見を伝えさせていただきたいんですが,私もこうやって今車椅子に乗っているんですけれども,実は私の息子もダウン症があって,重度の知的障害があって,今24歳で,保育園,小学校,中学校と地域の学校の特別支援学級で過ごしてきて,高校から特別支援学校で教育を受けてきたんですけれども,実は私は今,いろいろな企業で講演とか講師をしていたり,コンサルティングをさせていただいていまして,中でも就労支援の相談を受ける機会も最近増えてきました。
障害のある方がやはりなかなかその企業で根付かない,離職率もなかなか下がらなかったり,仕事が続けられないとか,また関わる職場の人たちが,関わり方が分からなくて悩んでしまうという問題が,今ものすごく大きくあるんです。
そこを考えたときに,どうしても子供たち,息子の教育を受けてきたことを思い出したり,今,実際に小学校,中学校に行かれている障害のあるお父さん,お母さんたちの相談を受ける中,先生方の相談を受ける中で,やはりそこを変えていかないと,今,社会にある,そういった働く場所で起きている問題ってなかなか解決できないと考えています。
息子もそうなんですけれども,特別支援学級で特別な支援を受けながら,みんなの中でおかげさまでいろんな有り難い支援を受けながら過ごしてきたわけなんですけれども,約20年前と今の問題って余り変わっていないと思っていて,日本の学校教育の中でも様々なこのインクルーシブ教育という取組を行われているのはものすごく実感して,進んできているなと思うんですが,まだ残念ながら,みんなの中にいることで特別な存在として扱うということが,今まだまだ残っていると思っています。
特別な存在としてそこで過ごすのではなくて,特別な存在にならないような支援というのを,改めて考えていく必要があるんじゃないかなと思います。それは環境を整えていく,当たり前のようにそこの環境で過ごせるような施設を作っていくであるとか,支援をしっかりとしていくことで,みんなの中で当たり前に過ごせる,そんな支援をこれからこの学校教育の中で作っていくことで,今ある社会での問題というのが解決できるんじゃないかと思っています。
実際に障害のある息子とずっと過ごしてきてくれている友達も今たくさんいまして,その友達もいまだに会話ができない息子に対してもちゃんと声掛けをして,会話ができて,恐らくそんな息子と過ごしてきてくれた友達は,今,社会に出ても,障害のある人がすぐ横にいて,いろんなトラブルを起こしたことがあったとしても,きっとそんなに大したことじゃなくて,みんなと同じだという視点で向き合ってくれているんじゃないかなと思います。
相互にとっていいことがあるということをゴールにすることで,この教育の現場でみんなと一緒に過ごすための支援って何なのかというのを,もう一度しっかりと考えていきたいなと私自身も思っています。
以上です。ありがとうございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
では,道永委員,お願いします。
【道永委員】 ありがとうございます。先ほどの朝日委員と大分話がかぶるんですけれども,まず1ページ目,確かに非常にきらびやかな文字が並んでいるんですが,基盤的な学力や情報活用能力を確実に身に付ける。これは確かに大事なことだと思いますが,やはり基本は子供たちの健康だと思います。ですから,教育基本法にもその言葉がありますように,心身の健康というのはとても大事なので,それを絶対に書き込んでいただきたいと思います。いわゆるどうやって自分の身を守るか,命を守るか,そういうヘルスリテラシーというんでしょうか,それがとても大事だということを必ず入れ込んでもらえればと思います。
あとは特別支援のこともそうですが,医療的ケアが必要な子供たちが今います。それに対して医療界が一生懸命働いているんですけれども,なかなか学校の方がそれに対応できていません。小学校,中学校,これから一般学校に,医療的ケアを必要とする子供たちも通うことができます。
そのときに,子供たちは多分うまく対応していくんでしょうけれども,看護師さんがいたとしても,学校がそういう対応をうまくできない。やっぱりどっちかというと受け取らない,受け入れないという体制ができていると思うので,先ほどおっしゃったように,周りがそういった子を特別視しないで,みんなで見守る,そういう意識を醸成していかなければいけないと思っています。
あとは3ページ目ですけれども,3つ目のパラグラフで,義務教育段階でうんぬんですが,私はやはり対面というのはとても大事だと思っていまして,今メールで,事務的な連絡はいいんですけれども,やっぱり顔を見て,表情を見て話をするというのが一番基本だと思います。ですからこれだけではなくて,社会性等を身に付けさせること「も」重要でありではなく,それが最も重要だと思っていますので,そういうふうに書き込んでいただければと思います。
今のところ以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
では,西橋委員,お願いいたします。
【西橋委員】 では,よろしくお願いいたします。世の中が本当に大きく変わって,教育もスピード感を持って変わっていかないといけないということは本当によく分かります。そして,ここで話をされていることは,もう本当にいつも一々もっともで,共感するということは確かなんです。でも,現場の方がどう受け止めるのかということを考えると,やっぱりこれは気が重くなります。
なぜか。限られた時間しかないのに,学校に期待されていることが余りにも多過ぎると感じるからです。例えば,高校で言えば,大学入学共通テスト,外部英語検定試験,それから調査書の様式が変わってくること,それに伴う手続面も含めて,大学入試にいかに対応するか,また,授業改善を含めた新学習指導要領への対応。こういったことだけでも本当に相当な分量になるわけです。
新しいことを職員全員が理解するためには,研修をしたり―さっきから何度も研修という言葉が聞こえてくるわけですけど―先生方それぞれが勉強したりしないといけないわけです。勉強するのはもうこれは当然だと思うんですが,じゃ,研修を組みましょうといったときに,それって本当に簡単にできるとお思いでしょうか。
本校で言えば,現在週35時間となっているわけです。ということは,毎日7時間。7時間目が終わるのは,勤務時間終了25分前ということになります。その後研修を組むことができるのかというと,それは組むことはできないです。組むためには,授業をカットしたり,それから短縮を掛けたりしなければならないわけです。本当に学ぶ内容も非常に多いですので,そういうこと(カットしたり短縮したり)を本当はしたくないわけです。
それから通常行わなければならない職員会議,例えばあとは人権同和教育に関する研修等があるわけですね。こういったことは年間計画にもう組まれているわけです。時間的に本当にたださえいっぱいなんです。そこに持ってきて働き方改革ということを言っていますので,もう本当に現場は,言っていることとすることが全く違うじゃないかと思っているのが現実だと思っています。
そういった中で,本当に横文字がいろいろ多いんですが,新しい言葉だとか新しい概念だとか,それから新しい要求が次から次へと飛び出してくるわけです。具体もなかなか分かりません。例えば,このプログラミングということ一つにしても,何となくこういうことかなとは思っていても,実際に経験したことがないので,実際分からないというのが本当のところだと思います。ほかのいろんな言葉がそうだと考えています。
何事も,説明した側は説明したとおっしゃると思いますけれども,どれくらい伝わるかということですよね。説明する側と聞く側の頭の中を一致させることってかなり難しいと思っています。大体2割くらいしか伝わらないんだよというのは先生たちにもよく言っているんです。この前教えたのに全然分かっていないとかいうことを言いますけれども,一方的に伝えるというのは2割ぐらいしか伝わらない,よくそういうふうに言います。
本当に私たちはこのおびただしい数の多くの資料,それから行政説明なんかも私も出たことがありますけれども,非常にすごいスピードでの説明です。やっぱり世の中にどれほど伝わっているのかということだと思っています。
私はやっぱりもっと想像力を持ってやっていかないと,現場はついてこないと思っております。これはついていきたいと思ってもついていけない,そういう気がしているんです。なのに,次から次へと要求があるので,そして働き方改革というので,やっていられないと先生たちは多分思うんじゃないかなと思うところがあります。だから,とにかく想像力をもっともっと働かせていただければなということを思います。
英語の外部試験のことについても,いつまでたってもごたごたしているのは,設計するときの想像力とかシミュレーションが不足していたからなんじゃないのかなとやっぱり思っています。例えば鹿児島県はたくさん離島があるんですけれども,離島の生徒が受検するのに2泊3日必要。もしこれが台風とか悪天候ということがあれば,更に日数が掛かったり,費用がかさんだりするということを,どのくらい想像されていたかなと思っています。
世の中が本当に複雑化していますし,様々なことを急いで改革していかないといけないというのは,私たち現場の方もやっぱり思っていますし,何とかしないといけないとは本当に思っています。学校の実際をもっともっと想像していただいて,伝え方であっても,それから方策であっても,スケジュールであっても,もう少し考えていただければなということが思うことです。
改革,改革といっても,現場がちゃんとついていかないことには,なし遂げられないと思っています。普通科のことも,全国津々浦々,いろんな学校があって,背景が様々であるということ,こういったこともやっぱり本当に想像していただければなということを思っています。
大変失礼なことを申し上げたかなとも思いますけれども,以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。私たちの議論が,現場に具体の取組を求めていくことになっていくという関係でありますので,私たちが本当にこの国のこれからのことを真剣に考えてやらなければならない。当然のことながら学校の先生方にも,やっていられないわというお気持ちのおありの方もいらっしゃると思うんですけれども,子供たちのために何をしていくのかということを議論して,その議論に基づいて文部科学省が様々な教育行政としての施策を打っていかれるということでありますので,私たちの責任の重さというのを改めて思い知ることになる御発言であったと思います。ありがとうございました。
では,いつも大変進行がまずくて申し訳ないんですけれども,50分あたり,時間にしましてあと30分余りでちょっと一旦切らせていただければと思っております。あと,御発言は何人か,今札を立てていただきまして,また新たに立てていただいた方もいらっしゃいますので,お願いはしたいと思いますが,失礼な言い方で申し訳ありませんが,可能な限り要点を手短にお願いいたしたいと思います。
長谷川委員,お願いします。
【長谷川委員】 ありがとうございます。ちゃんと見本になるように短く話したいと思いますが,さっきの岸田委員がおっしゃった,障害児が特別な存在ではなく,むしろ当たり前の存在として教室の中で過ごしていけるようにと。非常に強く共感しております。
それを実現するために,この個別な支援を受けたり,特別なカリキュラムで取り組む子たちが,ある部分ネガティブに見られる場合もあるというのも,文化としては変えていきたいと思っていまして,それはやっぱり学習に遅れがあったり障害がある子供だけが特別に,個別的な支援やカリキュラムになるとなっていると,どうしても子供たちにとっても,あの子はやっぱり遅れているから個別なんだ,特別なんだととらえられる部分はあると思っていますので,今回論点にもあるような,異才の子供たちが,より高度な教育にアクセスできるような,MOOCのようなシステムにアクセスできるような環境を整えたり,全ての子供たちが個別の学習計画に沿って学習できるようになって,学習が遅れている子たちだけが特別というわけではなくて,みんなが個別的な,特別なカリキュラムでできるような状況を目指す,実現できることによって,そういった文化の面も随分改善していけるんじゃないかと思っております。
御提案としては,ちょっと論点はまた別で,ICTの環境で,どうこのICT環境の財政的な整備をするのかというところで,現状の情報化の致命的な遅延があると記載いただいていますが,これだけ危機感がある状況を打破していくために,より特例的な財政出動というものが必要ではないかと考えておりまして,今,どう各自治体や各学校でICTの予算が決定されているのかを,ちょっと深く知っているわけではないんですが,基本的にはこのICT環境の整備も自治体の権限になっていると思いますが,これだけの危機感がある状況を打破するためには,国が一定期間は,もう国のお金で全部賄うから,一律的にこの項目だけは全自治体やろうとかいうような取り組み方が必要ではないか。
全ての項目は難しいと思うんですが,例えば児童生徒1人1台のコンピュータ端末の整備と,この高速ネットワーク環境の整備は,もう自治体の権限ではない,全て国のお金で,国が主導で,国がやり切るというぐらいの特例的なやり方をしないと,この危機感ある致命的な遅延の状況というのは打破できないんじゃないかと思っているので,そういったことも含めて検討いただきたいと思います。
以上になります。
【荒瀬分科会長】 喜名委員,お願いします。
【喜名委員】 ありがとうございます。新しい時代を見据えた教育の将来像の方向性ということで,少しわくわくするところもございます。ただ,2番目の「全国津々浦々の学校において質の高い教育活動を」ということ,これはそもそも義務教育が目指しているところでもありますし,私ども全国連合小学校長会では,このための環境整備をお願いしているところであります。
先週から今週に掛けて,東京,そして大阪,福岡で,それぞれの地区の校長先生にお集まりいただいて,協議会を持ちました。テーマとしては,学校における働き方改革,新教育課程への準備,全国学力・学習状況調査への対応,あとは英語,プログラミング教育などに関する情報交換をしたところでありますけれども,数年前からとみに,また今年特に感じることは,自治体間格差というのでしょうか,地域間格差の拡大であります。
これについては今お話があったところでありますけれども,地財の使われ方がどうなのかということも含めて,教育委員会レベルではなくて,首長のお考えとか,いろんなところで,ブレーキがかかっているように感じます。
2点目は,「個別最適化された学びの実現」ということ,これも学校教育がものすごく気にしていたところでありますけれども,なかなかできなかったところ。そういう意味では,AI,ICTが活用されて,ここが進んでいけばいいと思うのですけれども,このときに必ず課題になってくるのが,いわゆる今の年齢主義と習得主義の壁ということだと思います。日本の学校が,この年齢主義をずっと保っている状況の中で,ここが一つ課題になるのではないでしょうか。
3点目は,今回も出していただいておりますけれども,小学校高学年の教科担任制について,今回の概算要求でも2,000人の概算要求を出していただきました。指導本の工夫改善からの組替えということではありますけれども,学校が,より活用しやすい状況になってきている環境整備をしていただきました。
やはりここでまた重ねて申し上げたいのは,あくまでもこれは人がいないと,正規教員がちゃんといて初めて実施できることであって,誰でもいいというわけではない。そういう意味では,定数のしっかりとした改善が必要かなと思っております。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
それでは,篠原委員,お願いいたします。
【篠原委員】 ICT。教育にそのICTの環境を整備するというのは,私も大事な視点だと思うし,これからますます重要になっていくと思います。ただ一方で,新しい学習指導要領下においても,紙の教科書をベースにとなっています。ここは踏み外さないようにしてほしい。
つまりデジタル教科書で全てをカバーするんじゃなくて,紙をベースにしながら併用していくということです。そうすると,紙の教科書に出ているのをそのままデジタルでやるだけでは,私はもったいないと思います。紙は紙で活用して,デジタル教科書は,デジタル教科書として活用し,紙の教科書との差別化を図る。そういう点にしっかりと力を入れていく必要があると思います。ただ平面的に紙とデジタルで内容は同じですというだけでは,私は進歩がないと思いますので,その辺は是非工夫をしていただきたい。新しい学習指導要領に沿って,紙の教科書をベースとするところは踏み外さないようにお願いしておきます。
以上でございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
では,鶴羽委員,お願いいたします。
【鶴羽委員】 義務教育9年間を見通した小学校における教科担任制の在り方というのが論点に上がっています。これは本当に今の時代に合っているなと感じます。やはり高学年にもなりますと思春期を迎えていますし,やはりいろんな教員の方に関わってもらいたいというのはもちろんありますが,北海道の場合は広域で小規模校が本当に多いんです。専科の部分に関しては,授業数というのが加配の条件かと思いますけれども,その専科の授業がやはり数ができないというような課題もございます。そういった小規模校に対してどんなふうにこの制度を作っていくのかということは,是非考えて配慮していただきたいなと思います。
またICTは,北海道は遠隔も進んではいるんですけれども,何度か遠隔の授業を視察しましたが,全てが遠隔である必要が全くないんです。きちんと知識を植え込むところは別に遠隔じゃなくてもいいんですけれど,一旦つないだらもったいないからそのままやってしまおうというような流れがあるのも事実です。
ただ,本当に指導力の高い先生の知識を植え付ける授業の部分で,短時間であるならば,録画したものを見せて,そして質問事項とか何かアドバイス的なものは遠隔でつないでというようなコーディネートもあるのかなと感じます。
また小さな学校でなかなか整備が整っていないところに,お金を掛けて整理をするのが全てだとは思いません。数が何せ多いですから。そこの市町村,地域の中にある,つながる環境のところに子供たちを動かして学ぶ環境を作るというのも,一つの在り方ではないかと思います。それを実施するのは,先ほど何度かありましたけれども,縦割りだけじゃなくて横の関係,あるいは地域のいろんな企業ですとか自治体も一緒になってやっていくことが大事なのではないかなと感じました。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
それでは,戸ヶ﨑委員,お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】 前回欠席でしたので,先端技術の活用と,それから併せて意識改革という視点から,日頃考えていることを申し上げたいと思います。
今盛んに学校の働き方改革ということが言われているわけですけれども,本来的には,教育委員会こそ働き方会改革が必要であると思います。というのは,指導主事というのは,一般的に,数年間の出向的な立場で,目の前の仕事に忙殺されていて,将来を見据えた教育を創造していくなどという余裕はないのが現状なのではないかと思います。
にもかかわらず,今の新学習指導要領というのは,正にSociety5.0の実現というものを前提に議論されて作られているものであって,移行期間である現在,本来であれば,子供たちの活躍する未来社会を展望した教育というものが行われていなければなりません。ですが,現状はなかなか教育委員会も学校もその余裕がなくて,一言で言うと木を見て森を見ない教育に没頭しがちになるので,まずは,なぜ先端技術の活用が必要なのか,教育上のメリットだけではなく,社会情勢などと関連させた説明や研修により,教師の納得解を得ることが,重要だと思っています。
我が国のICTの活用状況は,世界から大きく後塵を拝していると言われています。社会に開かれた教育課程ということがキーワードになっている中で,学校での学びが社会とつながっておらず,学校で習っていない問題になると途端に解けなくなってしまう傾向にあります。そういうことの解決のためには,正に社会の現実を知らなければなりませんが,現実を知るためにも,ICTは大いに役立つはずです。それらが学習方法として,今後PBL型の学びやSTEAM教育などにもつながっていくものと考えます。
また,教師が大変忙しくなったというのは,業務量が増えていることや,子供が減って教員数が自然減になっているのにもかかわらず仕事のICT化が進んでいないことが大きいと思います。今後の学習指導は,日本のお家芸である教科指導を基盤としつつも,知識の定着や,アダプティブ(個別最適化)とPBLのすみ分けを加速化していく必要を感じています。
最後ですが,そのICTの環境整備は,デジタルデバイドが広がっているとかと言われていたんですけれども,間違いなく私は,今全国の自治体がかなり危機感を持ち始めてきているなということは実感として持っています。これをどんどん進めていかなくちゃいけないだろうし,併せて遠隔教育のKPIですとか,更に学力調査のCBT化,クラウド・バイ・デフォルトの理念の実現に向けて,日本の教育者や行政が一枚岩となる必要があると思います。更に,EBPMとか,PMまで行かないEBEの推進も待ったなしで強力に進めていく必要があると考えています。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
萩原委員,お願いします。
【萩原委員】 私からは2点話をさせていただきます。1点目は,ICT環境の話を先ほどから聞いていますが,高等学校での授業の様子というか,生徒の様子を見ていますと,小中学校での学びにかなり格差があるということです。自治体によって,どれだけ情報教育を含めて環境整備がなされているか。それによって,高等学校入学時のパソコンの使い方そのものも,かなりの差がある状況になっています。高等学校につながってくためにも,やはり小中のところでの全国同一の環境整備について,是非ともお願いをしたいと思います。
更に高等学校について言えば,探究的・協働的な学びを進めていくためにも,やはりICT環境が有用な部分であり,高等学校の中でも使える環境を,全国どこにおいてもです。例えばタブレット等を持ち込んで全員がインターネットにつなごうとしたときに,回線が細くて,文字情報のところだけで動画はなかなか見られないという状況になっています。子供たちが自由に使っていろいろなことを考えていく,お互いに話をしていく,探究的・協働的な学びを進めていくためにも,情報環境については是非ともお願いをしたいと思っています。
それからもう一点,高大接続の関係。大学等への進学等,高大接続という部分でもかなりいろいろあって,全ての高等学校の生徒が大学へ進むというわけではありませんので,いろいろな考え方があると思います。高等学校において本来きちっと学ばせていかなければならないこと,きちっと押さえさせていきたこと,これから取り組んでいかなくてはならないことが,学習指導要領の中にもいろいろ盛り込まれています。
先ほども話がありましたけど,高等学校はいろいろやることが多くて,大変な状態になっていますが,これからの子供たちが高校卒業後どうしていくのか,大学で求めていること,社会で求めていること,まだ差,ギャップがあるような感じは持っています。高等学校においては,そういう両方のギャップを受け止めながら何とかしていかなければならないということで,今後また,この会を含めていろいろ話をさせてもらえればと思っています。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
では,角田委員,お願いいたします。
【角田委員】 先ほどの西橋委員の御発言は,何かすごく心痛くお聞きしました。私がお会いする高校の先生方からも,そういった御発言をたくさん頂きます。向かっていく方向は本当にアグリーなんですけれども,そこに立ち向かっていく先生方への支援策というのを,やはりセットにして出したいなととても思います。
先ほどICTに関しては専門的なアドバイザーは要らないかとか,あとは専門的な人材がたくさんいる中で,それを束ねていくようなスクールマネジメントをやるような人は外から入ってくれないかとか,そんなお話もありましたし,先生方がインプットできる時間の確保というところに向けて,何かしら方策がとれないかなと思っています。先生方と学校が改革に向かうためのシステム的な,そういった支援策もセットで提案できたらいいなと思います。
でも,こういった中でも,改革を実現されている学校は結構多数出てきているんです。そこがどういう方策をとっているかという知見を得て,広めていくということも,一方で必要だと思います。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
牧野委員,お願いいたします。
【牧野委員】 ICTの環境整備を全国一括で求めていければ,といった長谷川委員や萩原委員の話は,そういう方向で行ければという思いは私もあるのですが,やはり大事なのは,なかなか首長たちの理解が得られないなんていう話もありましたけれど,結局文科省の予算の付け方にいろんな課題があって,地方負担がかなり課題になるんじゃないかとか,あるいはランニングコストはどの程度かかるのかとか,本当にやっていけるかどうかというところも含めて,首長たちとしっかりと意見交換して,これで行きましょうというような話にして,是非行っていただきたいなと。
とにかく1回付けたらあとはよろしくというのでは,例の小中学校の空調整備のときもそうでしたけれども,後からいろいろ出てきて,結局うまく予算が使えないじゃないかという話にもなりかねない。そこは事前に現場のことをよく考えている首長の皆さん方と意見交換をしていただいて,これで行こうというような合意を得ることを考えていってほしいというのが1つであります。
もう一つは,先ほどから出ておりますように,現場の先生方の御理解をというお話があるのですけれども,私はICTの話とか,あるいは地域の連携等についても,新しい学びをどういう形で現場に取り入れていくかというときに,先生方に対する,いわゆる学び直しをしなければいけないような状況は,どの程度あるのかということは,もう少しちゃんと把握しておく必要があるのではないか。一方では教員の養成大学の在り方の議論がなされているわけなので,今まで教員養成大学ではそういうことを扱ってこなかったような分野になっていることを,現場の研修だけで本当にやれるのかという検証は,ちゃんとやった方がいいと思うんです。
先ほどから,研修時間が足りないとか,本当にどれだけ理解が得られるのかとかいう話がありましたけど,本当に学び直さなければいけないんだったらば,ちゃんとカリキュラムを組んで,教員養成大学で学び直すような,そういったキャリアサイクルを考えるべきだと思うんです。
いわゆる余力でもってやってくれという話なのか,いや,これはもう根本的に学び直さなきゃとても対応できない話なのかの見極めはしておかないと,私はいつまでたっても現場の理解が得られないという話になりかねないんじゃないかと思っています。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。今,天笠委員と加治佐委員が札を上げておられますけれども,ほかの委員はよろしいでしょうか。今,牧野委員からもお話のありました教員養成の話も含めて,加治佐委員には御発言いただこうと思っておりますが,ちょっと最初のときに長谷川委員の御発言を途中で。いいですか。ありがとうございます。
それでもう一人最初のところで,ちょっと私がよく見ていなかったために御発言いただけなかった委員がいらっしゃいまして,貞広委員,どうぞお願いいたします。申し訳ありませんでした。
【貞広委員】 済みません。ちょっと前に戻っていただいて,議題1に関わることで申し訳ありません。2点意見を申し上げさせていただきたいと思います。
御丁寧に御報告を頂いたんですけれども,今回この報告を見せていただいた印象として,義務教育の段階における機会均等確保法が当初想定していた検討の射程は,今回の御報告よりももっと広かったのではないかという印象を持っております。特に,長谷川委員からも御発言がありましたけれども,1条校以外のフリースクール等の教育に対する公財政支援,公的な財政支援についての検討というものがなされなかったのか,それでよかったのかどうかと考えます。
もちろん先ほど担当課の御説明の中でも,憲法の問題もあるし,又は,更にどうしたものを同質,同等と考えるのか,更に通常の1条校の教育を超えるきめ細かい部分であるとか,それを超える内容にどの程度までの公共性を認めるのかといった,非常に難しい問題がもろもろあろうかと思いますけれども,このあたりは地方の裁量で補助するかどうかを決めるということではなくて,もうそれで議論は終わりということではなくて,難しい問題だからこそ,長期的に検討をそのまま進めていっていただきたいと考えます。
これは意見ですので,特に御回答いただく必要はありません。
もう一点ですが,夜間中学に関してです。都道府県1校でいいだろうという雰囲気になっていましたけれども,冷静に考えてみると,やはり1校では少な過ぎると思います。もちろん国がやりなさいということではないこともありまして,もう1校でも相当ハードルが高いというのは重々分かっていますけれども,国のメッセージとして1校でいいというのは,前の会議でも発言させていただいたことがあるかと思いますが,余りにもメッセージ性として弱いのではないかと懸念いたしますので,今回のことはこれとして,もう少し多様な機会,正に新しい時代の教育の中に多様な子供たちを誰一人度取り残すことなくということを標ぼうされていることからも,継続的な検討をお願いしたいと思っております。
以上です。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
それでは,若江委員,お願いいたします。
【若江委員】 いろいろ皆さん方の話をお聞きしておりまして改めて感じたのですが,新しい時代を見据えて教育を考えていくというときに,社会に開かれた教育課程という新たな指針となるものが提示されたわけですよね。それに関していろんな課題はあるんだけれども,やはりどう解決していくかということに私たち自身が目を向けない限り,時間はどんどん過ぎていくと思います。
キーワードになるのが,幾つかの発言にありましたように,やろうと思えばやっておられる,つまり実践しておられる学校,自治体,教育委員会さん,いろんなところがあるわけです。そのときに何が大事かというと,やっぱり腹をくくって,ガバナンスをきちっと利かせているということだと思います。教育界においてはそのガバナンスという概念が余りにも弱過ぎて,できないことを語る時間があるならば,どうやればできるのか,そして果敢にトライアンドエラーということも必要だと思うんです。
ですので,もちろん西橋委員が言われた思いも物すごく分かります。だからこそ前向きに取り組んでいくということが大事で,今回の指導要領の課程の中にも言われた重点育成能力で思考・判断・表現,私はこれがすごく好きで,みんな考えて,何らかの判断まではするんだけれども,表現のところの行動で大胆なことができないでいるんじゃないかなと思います。
そういう意味では,今も一番次世代の人材を求めているのは,地方の行政もそうですけれども,産業界なんです。産業界は今ESG経営ということで,やはり教育に向けて物すごくその重要性を認識しています。企業側を代表する立場として参加をしている私としましては,本当に企業にもっと高い次元での貢献を求めていかなければいけないなと再認識した次第です。ありがとうございます。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
それでは天笠委員,お願いいたします。
【天笠分科会長代理】 失礼いたします。教科担任制のことに関わって,一,二申し上げさせていただきたいと思います。
5ページのとおり,ある意味で言うとほぼ論点は出たのかなという,そんな認識を思っています。この間,何回かこういうタイトル等で,それぞれの発言というのが,およそこういう形で論点として整理されて,そして今日文章化された,こういうふうにまずは捉えたいと思います。
そういうふうに捉えたときに,いわゆるこのタイトルというんでしょうか,「義務教育9年間を見通した小学校における教科担任制の在り方」ということで,小学校の教科担任制を検討するというか,そのありようを検討するんですけれども,その検討することは,小学校の高学年に限定した話にはならなくなってくるというか,当然この話は中学校の在り方と小学校の在り方,正にだから義務教育9年ということなもので,この論点を詰めていくと,テーマそのものが狭くなってくる,ある意味で言うと義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方ということで,小中合わせて教科担任制の在り方を検討することの必要性等は,中の論点を見ればそういう文章になっているのは,既に様々に記述されていることですし,更に言うならば義務教育9年間を超えて,12年間の学校教育の在り方における教科担任制というんでしょうか。
要するに,議論をしながら,あるいはここをスタートとして,小学校の教科担任制を一つ拠点にしながら検討を始めたわけですけれども,それの成案を得ようとすると,それにまつわって,よりある意味で言うと,枠組みを,あるいは対象とするものを,いろんなことを見つめながら進めていくとそういうことになっていくわけで,ですからそれはある種の議論の発展系というんでしょうか,そういう押さえ方をしていく必要があるんじゃないかとしたときに,やっぱり全体として何を目指すのかということで,少なくともそうするとこの教科担任制の在り方については,従来の小学校でもなく,中学校でもなく,新しい第3のタイプの学校の在り方ということの中で,このことも詰めをしていく。
すると,先ほどのICT化の話ですとか,個別最適化に関わる学習の話ですとか,そういうものがそこにまつわってくるというか,関連していく,そういうある種の見通しが次第に出てくる部分があるんじゃないかと思うんですけれども,最初に戻りますと,ICT化の話と個別最適化の話,それから教科担任制というのは別立ての別々のそれぞれですけれども,詰めながらだんだんそれが互いに1つの姿になってくるというか,形になってくるということで,そうすると改めてこの議論の目指すところという意味では,2ページの資料になるかと思うんですけれども,現在のところはそれぞれの部会とか特別部会とかでそれぞれ走っているわけですけれども,それが互いにある意味で融合したり,場合によっては時に対立することもあり得る話なんじゃないかと思うんですけれども,それらが一体となりながら1つの姿になっていくとかゾーンになっていく。
ですから,あらかじめある種の目指す姿が暗黙のうちにあって,それを前提にしながら話すということよりも,このそれぞれ部会がそれぞれ積み上げながら,今のところ詰めていくと,そこに一つの姿がある。それを私の個人的立場からすれば,第3のタイプの新しい姿を模索していく,そういうことも一つの方向としてあるんじゃないかと考えます。とすると,各部会で一体どれだけ議論が進んでいるのかとか,あるいはどういう話がそれぞれ出ているのかということを,逐次出していただくことの必要性とか大切さが出てきたんじゃないかと思います。
ですから,教科担任制という話があるときに,例えば教員養成部会でそのことについてどれほどの議論が受けて,進められようとしているのか,されているのか,またそのキャッチボールを私どもとしてはいただきたいということになるし,あるいは合同の部会の中でそれが一定程度処理されるとか,そのあたりのところの段階に入ってきているように私は認識していますので,今後,申し上げたような形のそれぞれ部会とのコミュニケーションとか,やりとりということもお願いしたいと思うんですけど,小学校の教科担任制といっても,そういうまつわりとか相互の関係の中でそれを位置付けることの必要性とか大切さということを申し上げさせていただきました。よろしくお願いいたします。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。特別部会の仕事であるということなのかと思うんですけれども,そういったこともまた今後進めていかなければならないということで,非常に重要な御指摘を頂きました。ありがとうございました。
では,加治佐委員,お願いいたします。
【加治佐分科会長代理】 私は2点ほど申し上げたいと思います。
1点目は,先ほどの牧野委員が教員養成との関わりをおっしゃいましたので,ちょっとそれについて,今,教員養成部会とかでどういうふうになっているか,お話ししたいと思います。
今日たくさんお話がありましたように,初等中等教育の現場でもなかなかこれに対応できていない,あるいは教育行政も対応できていないんだというお話もありましたけど,教員養成大学・学部においても全然対応できていない,そう言われておりまして,だから画期的に変わらないとこれに対応できない。私自身は,多少じくじたる思いもありますけれども。
で,どういう方向が出ているかといいますと,なかなか一挙にすべての教員養成を底上げするということは難しいので,特に牽引役になるような大学をフラッグシップ大学として指定して,ほかの大学の教員養成を先導する,あるいは牽引する,そういうことを始めるということで「中間まとめ」が出たところです。
そこで,なかなか全員の先生というのは難しいですから,Society5.0を担えるような先生のリーダーみたいな人を,取りあえずはフラッグシップ大学の教職大学院等に送っていただいて,そこで対応していくのが現実的かなと思います。牧野委員がおっしゃったように,何かそこの仕組み作りというのを,ラーニングポイント制とかを含めてやっていただけると,より円滑に進むのかなと思います。これも非常に緊急の課題として取り組むということになっております。これが1点です。
それから2つ目は,言ってもしようがないのかなと思うようなことをあえて申し上げたいと思うんですが,もし本当に公正で個別最適化された学びとか,あるいは本当にストレスのない遠隔教育とかオンライン教育とか,そういうのが実現していったら,私は学校の今の常識が通用しなくなるのかなと思っております。
1つは,喜名委員も年齢主義のことを言われましたけれども,恐らく意欲と能力の高い子供,進度の速い子供というのは,同学年じゃなくて異学年,上の学年に行く,飛び級をやるとかいうことが当然起こってきます。もちろんそうでない子供にもそれに応じた対応が当然なされる。そういうことはそんなに無理しなくてもできるとなったとします。
今の学校というのはインクルーシブとかがいろいろ進んできています,あるいは教職員もチーム学校ということで,ダイバーシティが進もうとはしていますけれども,ただ基本的にはやっぱり同質集団で形成されているわけです。同学年の子供たちによる学級というのが基本なわけです。
こういう形が果たして続くのかなという思いがあります。学校のこれまでの組織論が通用しなくなる可能性があるんじゃないかということを思ったりします。だから,特別部会の議論の中でそこの部分まで言及するのかどうかということです。少なくとも課題としては認識すべきなのかなと思います。
更に,これは先ほど言いましたように,特に意欲と能力が高くて,家庭環境に恵まれた子供というのは,これだけいろんな技術が発達してくると,学校に毎日行く合理的理由がなくなるのではないか。今でも広域通信制高校ではそれに似たような学校がないわけではないわけです。既にそういう兆候はあるわけです。つまり学校に毎日子供たちが来るというのは,果たして常識として通用するかということが起こり得るんじゃないかということです。
そうすると,先ほど問題になりました不登校の問題,在籍管理,在学管理の問題があります。これは就学義務にも関わるのかもしれませんが,こういうのが果たして今後も続くのかなという気もするんです。ですから,要するに学校について我々は自明のこととして思っていることが,ひょっとすると自明じゃなくなる可能性があるということまでを視野に置いたような検討をしていかないといけないのではないか。
すぐではないと思いますけど,中長期的には,中長期といっても昔の感覚の中長期じゃなくて,10年,20年すると多分そういうことがもう現実課題になるような気もするんです。そういうことも意識していいんじゃないかということを,ちょっと最後に申し上げたいと思います。
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。新しい取組をしていくということについての重要な視点をお示しいただいたのではないかと思います。ありがとうございました。
本日,時間もちょうど4時前となりましたので,これで本日の議論は終わりたいと思います。様々な形で様々な御意見を頂きましたこと,本当にありがとうございました。
では,この後の日程につきまして,事務局の方からよろしくお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】 長時間にわたりましてありがとうございました。次回の初等中等教育分科会の日程につきましては,12月13日金曜日の15時から17時での開催を予定としております。詳細につきましては,追って事務局から御連絡申し上げます。
【荒瀬分科会長】 ということであります。
申し上げようかどうか,迷ったんですけれども,御発言をいろいろ聞いていまして,1つ申し上げたいと思います。この論点整理,初中分科会の資料5として出されている,新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会の論点整理の1枚目に記載されているのは,目標が実現された学校のイメージということですね。これは「こうなったらいいんでしょうけど,なかなかそうはならないですよね」という見方は当然あると思うんですが,今想像できる,こうであったらどれほどいいのだろうかということが示されているように思います。趣旨が違うという御指摘を受けるかもしれませんが,私はこれを読んで,“I have a dream.”ということを思います。いつかこういったようなことが実現していく,そのためには課題はたくさんあって,道も本当に険しくて,そもそも道があるのかないのかというのも分からないかもしれませんが,ただ,今想像できる中でこういったことが本当に実現していくということを,単なる夢物語で終わらせないで,それを一つ一つ乗り越えていきましょうということを共有するべく,こういう資料になっていると,私は理解しております。
ちょっとどうでもいいような話を申し上げました。失礼いたしました。本日の議事はこれで終了いたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

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