障害を抱えた全国のアスリートのサポート拠点となっている施設が、和歌山県内にある。和歌山市本町の「県立医科大学みらい医療推進センター」。特殊な設備で身体データを測定・分析し、各選手のパフォーマンス向上に役立っている。歴史が浅い「障害者スポーツ医科学」の数少ない国内研究拠点の一つだ。【黒川晋史】
同センターは2009年に開業。文部科学省の「障害者スポーツ医科学研究拠点」に国内で初めて指定され、既に東京パラリンピック出場が決まっている陸上選手なども利用している。
選手らは気温や湿度を自由に調整できる「人工気候室」で車椅子をこぎ、心拍数や体温の変化、発汗の様子などのデータを取ってもらう。車椅子でも乗れる大きなランニングマシンや、特殊なカメラで関節の動きを捉える三次元動作解析装置などもそろう。
センター内の「げんき開発研究所」で副所長を務めるのは、パラ陸上日本代表の指宿立(いぶすきたつる)監督(54)だ。指宿監督は、最新機器でデータを測定・分析する意義について「障害者の身体機能は、健常者と異なる場合があるからだ」と強調する。
例えば、脊髄(せきずい)の首部分を損傷して腕や足にまひが残る人は、一部の神経が遮断されている影響などで心拍数が上がりにくく、長距離のレースに向かない傾向があるという。指宿監督は「障害の種類や程度は一人一人違う。個別にデータを取り、どんな種目が向いているか、どんな運動は控えた方がいいかを検証することが必要だ」と説明する。実際、データ測定で長距離に向かないことが分かり、短距離に転向して国際大会で優勝した選手もいるという。
一連のデータは多くの医学者が参照し、障害者がどのように運動と向き合うべきかの「指針作り」にも寄与する可能性があるという。指宿監督は「今は社会の仕組みが十分に整っておらず、障害者がどう運動と向き合えばいいのかが示されていない」と指摘した上で、こう語った。「センターのデータを生かし、パラリンピックで多くの選手が活躍する。そのことを通じて、障害者が運動する機運が盛り上がってくれたらうれしい」
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January 02, 2020 at 01:57PM
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