【越山若水】「１冊の科学絵本と出会うことで子どもたちの世界の見え方がちょっと変わります」―。幼児向けの月刊科学絵本「かがくのとも」（福音館書店）の元編集長、山形昌也さんが県内での講演で語った言葉が印象に残った▼昨年創刊５０年を迎え、６００号を発行した「かがくのとも」。単に自然などの知識を与えるのではなく、物語を通じて子ども自身が感動したり、驚いたりすることを大切にしてきた。そのため、編集作業に多大なエネルギーを注いでいる▼数人の編集部員がテーマを考え、選んだ作者と作品に込めるメッセージを話し合う。作者ならではのメッセージがないと依頼を断ることもある。原画が届いても、間違いがないか専門家２人に細部までチェックしてもらい、何度でも書き直す▼月刊とはいえ１冊仕上がるのに平均５年、７年以上かかったケースもある。「子どもたちの成長に影響を及ぼす」との思いが妥協を許さない本作りを支えている。今年２月号の「でんしゃをはこぶ」は、えちぜん鉄道の車両がモデル。工場で中古車両から生まれ変わり深夜に運ばれてきた電車への愛情がにじむ▼何冊も手掛けた絵本作家加古里子さん（越前市出身）は、民主主義には「かしこさ」が必要であり、子ども自身が科学絵本を通じて「自主的にかしこく育ってほしい」との言葉を残している。思いが本から伝わってくる。
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February 24, 2020 at 05:20AM
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