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「科学不信の碑」の教え、異変あればすぐ避難せよ 九州の火山防災 - 西日本新聞

 新局面 災害の時代―後悔しない備え❻

 年明けから口永良部島新岳や桜島、フィリピンのタール火山など国内外で相次いで噴火が起きています。

 その桜島は12日、58人の犠牲が出た1914年大正噴火から106年がたちました。当時と同規模で桜島が噴けば、火山灰の影響でどの空港が閉鎖されると思いますか。鹿児島だけでなく、福岡をはじめ九州の全空港はもちろん、本州も羽田辺りまで広範囲に及びます。噴火規模の大きさをご理解いただけるでしょう。

 58人の犠牲を出した2014年御嶽山噴火の悲劇は、気象庁が警戒レベルを引き上げなかった責任を巡り、ご遺族による国家賠償請求訴訟が係争中です。御嶽山で起きたような水蒸気噴火の予知は無理だと火山学者は口をそろえます。

 15年口永良部島噴火でも直前予知はできませんでした。1人が負傷し、全島避難の決定は火砕流が海に流れた後です。私も、地震だけでなく噴火もまだ予知は難しいと考えています。

 火山が鎮まるまで、住民は隣の屋久島で最長1年超の避難を強いられました。長い避難生活について調査するにつけ、噴火予知だけでなく、避難指示を解除して安全に帰宅できる判断を早めに下せる知見、予測技術の必要性を痛感します。

 ただ、みなさんはどの程度、予測に関する科学的な情報を頼りにしますか。

 桜島にある東桜島小学校の校庭に、大正噴火を今に伝える櫻島爆發記念碑=通称「科学不信の碑」がたたずんでいます。当時の村長の遺言で建立された碑は、科学を過信せず、何か異変があればすぐ避難せよと説いています。地震が頻発するなどしていたのに、問い合わせた鹿児島測候所(現気象台)が「噴火なし」と回答したのを信じて住民に避難不要と指示し、結果的に多大な犠牲を出してしまった無念が読み取れます。

 私たち研究者も自然災害における判断の参考とすべき戒めと受け止めるべきです。過去のデータをいかに詳しく分析したとしても、これから起こる新しい現象を必ず的確に予測できるわけではありません。地域をよく知る住民自身が何かおかしいと思えば、すぐ身を守る行動をとることの大切さを碑は教えています。

 今年は、43人が犠牲になった雲仙普賢岳の噴火が始まって、ちょうど30年。雲仙は過去に、いまだ津波警報に組み込まれていない、火山活動に伴う津波を有明海で引き起こしています。桜島の活動でも津波は起こり得るし、火砕流が海を渡る恐れもあります。対岸の鹿児島市街地でも備えは必要です。原発事故との複合災害など新たな課題を突き付けられる中、九州で火山による犠牲者を二度と出さぬよう、防災教育に自治体と住民が共に取り組んでいかなくてはなりません。(九州大助教 杉本めぐみ)

 ◆備えのポイント❹ 「櫻島爆發記念碑」現代語訳(要約) 住民は学理を信頼せず、異変を認知する時は、未然に避難の用意をすることをもっとも肝要とし、平素から倹約・貯金し、いつ災害にあっても路頭に迷わない覚悟をしなくてはならない

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府出身。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て2014年から九州大助教。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」

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February 04, 2020 at 11:49AM
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