国立科学博物館(館長 林良博)動物研究部 並河洋研究主幹と西川輝昭客員研究員は、海洋研究開発機構 超先鋭研究プログラム 宮本教生研究員とともに、相模湾から最近得られたフサカツギ類(半索動物)の標本について詳細に研究した結果、新種であることが明らかとなり、Cephalodiscus planitectus Miyamoto, Nishikawa and Namikawa, 2020 (ヒラクダエラフサカツギ)として記載しました。
フサカツギ類はこれまで日本国内からは3種しか発見されていない珍奇な海産動物であり、これは、フサカツギ類として日本国内から約30年ぶりに4番目の種、相模湾からは85年ぶりに2番目の種の発見となります。
本研究成果は令和2年1月23日付で日本動物学会のZoological Science誌に掲載されました。
半索動物は脊椎動物や棘皮動物(ウニ、ヒトデ類)に近く、ヒトを含む脊椎動物がどのように地球上に出現したかを考える上で重要な位置にある動物です。
半索動物にはギボシムシ類とフサカツギ類があり、特に、フサカツギ類は世界から20種程度、日本国内からはそれぞれただ一度しか採集されていないエラフサカツギ科3種しか発見されていない非常に珍しい動物です。
相模湾からは、昭和天皇が1935年8月に城ケ島沖でご採集になった標本をもとにAtubaria heterolopha Sato, 1936(エノコロフサカツギ)が1936年に報告されています。
- 本研究の成果
フサカツギ類では、虫体の形に加え、棲管の形状が分類する上で重要な形質となっています。通常フサカツギ類の棲管は立ち上がった形状をしていますが、ヒラクダエラフサカツギのものは、これまで現生種では知られていなかった平たく岩に張り付いた形状です。このヒラクダエラフサカツギの棲管の形状は、化石しか知られていないフデイシ(筆石)類と類似するところもあり、本種が半索動物の進化を考える上で重要な位置にあるものと考えられ、今回の発見は学界にとって重要な意味を持つものと考えられます。
本種のタイプ標本は、国立科学博物館に所蔵されています。また、本研究の一部はマリンバイオ共同推進機構(JAMBIO)の支援を受けて行われました。
- ヒラクダエラフサカツギ
- 論文情報
著者名 宮本教生1・西川輝昭2, 3・並河洋3 (1海洋研究開発機構, 2東邦大学、3国立科学博物館)
雑誌名 Zoological Science
DOI https://doi.org/10.2108/zs190010
フサカツギ類の分類
半索動物Phylum Hemichordata
ギボシムシ(腸鰓)綱Enteropneusta 大型種が多い。現生は4科12属約70種
フサカツギ(翼鰓)綱Pterobranchia 体長数mm程度の小型種。現生は2科3属約20種
エラナシフサカツギ科Rhabdopleuridae
エラナシフサカツギ属Rhabdopleura(5種)
エラフサカツギ科Cephalodiscidae
エラフサカツギ属Cephalodiscus(約15種)
エノコロフサカツギ属 Atubaria(1種、相模湾固有)
フデイシ(筆石)綱(化石)Graptolithina
【国立科学博物館】https://www.kahaku.go.jp/
【国立科学博物館 筑波研究施設 】 https://www.kahaku.go.jp/institution/tsukuba/
【海洋研究開発機構】https://www.jamstec.go.jp/
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January 29, 2020 at 12:10PM
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