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MIで先陣を切る住友化学、材料開発で驚きの効率化 - ITpro

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 住友化学がマテリアルズ・インフォマティクス(MI)を活用した材料開発で成果を出し始めた。研究者の経験に頼っていたこれまで方法からMIの導入によるデータに基づく(データ駆動の)手法に変えることで、材料開発の効率化や高度化を実現しつつあるのだ。日本の材料メーカーの中でも先駆的な位置付けにある同社に、MI導入の理由や活用のポイントを聞いた。(聞き手は近岡 裕)

なぜMIを導入しようと考えたのですか。

木全氏:チャンスを逃したくないからです。地球球温暖化や廃プラスチックの問題など社会環境に大きな変化があるときは、ソリューションとして新たなビジネスを提供できる好機だと我々は捉えました。一方で、製品のライフサイクルはどんどん短くなり、かつ顧客の要求はますます個別化して、高度で複雑なものになっています。もう、これまでの「実験至上主義」的な方法では材料開発のスピードが追いつかない。データ駆動型の研究開発を行って効率化・高速化を図らないとダメだと考えました。こうして、それを実現する手段として我々はMIに白羽の矢を立てたのです。今はMIをキーテクノロジーに据え、研究開発の現場に実装することに取り組んでいます。

(出所:住友化学)

(出所:住友化学)

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金子氏:チャンスだと感じる一方で、危機感も覚えました。機械学習をはじめとする人工知能(AI)と計算機のパワーの進化を利用し、異業種から材料業界に乗り出そうとする動きが見られたからです。

木全氏:例えば、ソフトバンクが物質・材料研究機構に資金を出して電池の開発をしたり、米国のバイオスタートアップ企業であるZymergen(ザイマージェン)に莫大な投資をしたりしています。もっと有名なのは、全固体電池を開発するトヨタ自動車でしょう。

金子氏:こうした異業種による材料開発の潮流が我々に大きな危機感を与えました。確かに、我々には何十年も培ってきた材料開発の知識がある。しかし、それだけで本当に勝ち残れるのか。「井の中の蛙大海を知らず」ではないのか。彼らに対抗すべく、機械学習などを取り込んでいかなければ生き残れないのではないかと随分議論した結果、MIを導入することを決断したのです。

住友化学技術・研究企画部主席部員(インタビュー当時。2020年5月より内閣府)の木全修一氏

住友化学技術・研究企画部主席部員(インタビュー当時。2020年5月より内閣府)の木全修一氏

(出所:日経クロステック)

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住友化学ではMI活用がどれくらい進んでいるのでしょうか。

木全氏:社内の研究開発部門でMIを使っていこうという機運がだいぶ盛り上がってきています。本格的に実装していくフェーズに入り始めたという実感があります。

金子氏:MIを使わないと求められた開発期間中に正解(成果)を見つけ出せないんじゃないかと思い、開発現場からMIを使いたいから協力してほしいと我々に相談に来るケースも増えています。

ターゲット構造と説明変数が1対1で対応しない

改めて、MIとはどのような技術なのですか。

木全氏:材料の物性と構造のデータを全て組み合わせ、その最適点(最適解)を見つけ出す技術です。技術系論文数を見ると、MIは2010年代から急に増加しています。多くの人がMIを最先端技術と見ていると思いますが、実は考え方自体は昔からあります。1970~80年代に既に論文が出ています。しかも、既に製薬や農薬の分野ではバイオインフォマティクス(BI)が1990年代から、ケモインフォマティクス(CI)が2000年代から活用されており、当社でも農薬分野では1980年代から実績があります。これらも考え方はMIと同じで、材料分野よりも先行していると言えます。

 MIが後れたのには理由があります。各インフォマティクスには「3要素」が必要です。すなわち、突き止めたい[1]ターゲット構造と、それを説明するための[2]説明変数(パラメーター)、さらにそれを解き明かすために必要な[3]データベースです。このうち、BIとCIはターゲット構造も説明変数も明確で、両者が1対1で対応する上に、誰でもアクセスできるパプリックデータベースが充実しています。ところが、MIではターゲット構造も説明変数も複雑で1対1で対応しないケースが多い。加えて、パブリックデータベースもあまり存在しないのです。

ターゲット構造と説明変数が1対1で対応しにくいとはどういうことでしょうか。

木全氏:分かりやすいのがプラスチックです。例えば、ポリエチレンでも、フィルムとして使うものと、自動車の燃料タンクに使用するものとでは、形状も物性も異なります。つまり、同じ材料でも、その先のターゲット構造が一義的に決まらないという複雑さがMIにはあるのです。逆に、ターゲット構造をどのような説明変数で説明するかも難しい。例えば、プラスチックの材料であれば、化学的な構造は1つ決まっても、加工条件によってその先の物性が全て変わってしまうという複雑さもあるのです。

 要は、説明変数とターゲット構造が複数対複数の組み合わせになるので、問題を解くのが難しい。その上、データもそろっていない。これらの課題が、MIが活用面でBIとCIに後れを取った理由です。

(出所:住友化学)

(出所:住友化学)

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August 07, 2020 at 03:00AM
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