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「こども科学実験教室」早大系属校のメリット地域にも…早稲田摂陵 - 読売新聞

 早稲田摂陵中学校・高等学校(大阪府茨木市)で昨年7月27日、早稲田大学による「こども科学実験教室in茨木2019」が開催された。同大と茨木市教育委員会、同校が連携し、市内の小学生たちに科学実験を通じて学びの楽しさを伝えた。実験教室の様子をリポートするとともに、八木章治校長にこの教室の狙いを聞いた。

 早稲田摂陵中学校・高等学校は、早稲田大学の系属校の一つだ。同大には二つの付属校と五つの系属校がある。系属校は首都圏に2校、佐賀県とシンガポールに1校ずつ、そして関西地区では同校だけだ。

 系属校の強みを生かし、同校には早稲田大学との連携の機会が多い。同大の留学生が中学2年と高校2年の各クラスを訪問し、交流を深める「アウトリーチプログラム」や、同大各学部の教員による特別授業などが同校で行われている。反対に、高校1年生から希望者を募り、卒業生の案内で早稲田大学のキャンパスを訪問する機会もある。野球などの早慶戦の応援にも駆けつけるなど、さまざまな交流を行っている。

 八木章治校長によると、同校は系属校としての連携の活動を校内にとどめることなく、機会あるごとに地域にも広げてきたという。たとえば一昨年秋には、茨木市立中学に在籍する生徒79人を対象に、早稲田摂陵のグラウンドで「早稲田摂陵公開講座サッカークリニック」を開催した。早稲田大学サッカー部の出身で、Jリーグの監督を務めた松山博明さんに指導を受けられるとあって好評を博した。

 同校と早稲田大学は、今後も、いっそう積極的に地域と連携していこうと、昨春、市教育委員会と協定を結んだ。今回の「早稲田大学 こども科学実験教室in茨木2019」は、協定の締結後、初のイベントだ。その後、昨年11月にも学校及び教育関係者に向けた研究大会を企画し、早稲田大学副総長で、早稲田大阪学園の理事長でもある、政治経済学術院の須賀晃一教授(経済学博士)を迎えて講演会を行った。

 4年前に就任した八木校長は、それまで20余年にわたり、市教育委員会に奉職し、教育長を務めた経歴を持つ。「関西唯一の早稲田大学の系属校が茨木市にある。このポテンシャルを生かし、これからも地域の教育の充実と発展に尽くしていきたい」と抱負を語る。

 「こども科学実験教室」はこの日、午前と午後の2回行われた。薬品やガスバーナーを使った実験を行うことから、安全を考慮して対象は市内の小学5、6年生とし、各回24人に定員を絞ったが、約150人の応募があったという。

 取材に訪れた午後の部の開会式で、早稲田大学教育・総合科学学術院の伊藤悦朗教授(理学博士)は「理科のイメージって何だろう。観察や解剖かな。研究というのは、なんでそうなっているのだろうと追い求めていくことです」と小学生にも分かりやすい言葉であいさつ。次いで実験室での注意点を説明した。「白衣を着てゴーグルを着けます。薬品と火を使いますが、子供より大人の方が多いので安心して指示に従って実験していきましょう」

 理科実験室に移動して、学校側が用意した白衣を着てゴーグルを着けると、子供たちは小さな科学者のようだ。伊藤教授のほかに同大の理科の専門スタッフが3人、さらに同校の理科の先生方や理科部員の生徒たち、参加者の保護者と、多数の大人や上級生たちが見守る中、実験が始まった。

 実験テーマは「無電解めっきと合金」。そう聞いて小学生たちは最初、取りつきにくそうな表情だったが、「銅メダル3枚を化学の力で金メダル、銀メダルにしていこう」と説明が入ると、急に生き生きしてきた。

 「Kはカリウム、Caはカルシウム、Naは何でしょう」と、同大の理科専門スタッフが保護者に対して元素記号と元素の名称を問いかける。自信なさそうに答える保護者にヒントを出しながら正解に導くと、「この教室にも周期表が貼ってあります。どんな元素があるのか興味がある人は後で見てくださいね」とアドバイス。巧みな進行のおかげで、小学生だけでなく保護者も含め、教室が一体となる。

 次いでガスバーナーの扱い方について説明があった。「オール電化で自宅にガス栓のない人はいますか」と確認し、まずガス栓の構造を説明。さらに「全部バラバラにしてみよう」と声がけすると、小学生たちは張り切ってガスバーナーを分解し、元に戻し、構造を理解していった。

 いよいよ実験本番だ。まずは水酸化ナトリウム溶液に亜鉛の粉末を混ぜ、ガスバーナーで沸騰させる。「水酸化ナトリウム溶液は肌に付くとヌルヌルします。それは肌を溶かすからなので、付かないよう慎重に扱うこと。白衣やゴーグルも薬品から守るために身に着けける」と注意が与えられる。

 2人1組となった小学生に、先生が1人ずつ付いて見守る。溶液の中に銅板を入れると、表面が銀色に変化した。次に、銀色になった銅板を水洗いし、バーナーの炎にかざすと今度は金色に変わった。

 この実験では、金属のイオン化傾向の差を利用して、水酸化ナトリウム溶液に溶けた亜鉛を、銅板の表面に析出させる。これが電気の力を使わない「無電解めっき」だ。ガスバーナーの炎で加熱すると金色に変わったのは、熱で融解した亜鉛に銅板の一部が溶け込み、「合金」の真鍮(しんちゅう)ができたからだ。

 溶液を配ったり、回収したりするスタッフもいて、何の心配もなく実験は終了した。

 実験終了後に早稲田大学理事で早稲田大学教育・総合科学学術院の松本直樹教授(文学博士)から小学生に、1人ずつ修了書が手渡された。大学教授や専門スタッフに学ぶ2時間の経験と、金銀銅の3枚のメダルに修了書、さらには大学からプレゼントされた白衣。子供たちにとってこの夏の特別な思い出となったことだろう。

 松本理事は「早稲田大学の学生の約7割は1都3県の首都圏中心であることから東京の地方大学と呼ばれています。首都圏以外の全国から優秀な学生を迎えたい」と語る。そのため理事自らがチームを作り、早稲田大学の付属校・系属校を始め、さまざまな機会に早稲田大学の資源を生かした活動を展開しているという。

 早稲田摂陵高校を含め、系属校は早稲田大学に推薦制度で入学できる内部進学枠を持っている。同校から2019年の春には29人、それまでの4年間では120人の卒業生が早稲田大学へ内部進学している。進学者が増えるにつれて、高大接続もますます深まっていくことだろう。今後の展開を注目したい。

 (文・写真:水崎真智子)

 早稲田摂陵中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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April 07, 2020 at 03:21AM
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