令和2年3月17日
このたび,科学技術の理解増進施策の一環として,「一家に1枚 南極 ‐地球の未来を映す窓‐」ポスターを作成し,ウェブサイトへの掲載を開始します。
科学技術の理解増進施策の一環として,作成した「一家に1枚 南極 ‐地球の未来を映す窓‐」ポスター(監修:大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立極地研究所)のダウンロード用画像を本日,科学技術週間ウェブサイト(https://stw.mext.go.jp/)に公開しました。今回は,家庭での子供への学習支援として,国立極地研究所が作成した小・中・高校生向けの楽しく学ぶポイントもウェブサイトに掲載しています。
今後,本ポスターは,全国の小・中・高等学校等に配布するとともに,配布に御協力いただける全国の科学館,博物館等を通じて,広く配布を行う予定(※)です。
(※)配布時期・方法については,科学技術週間(令和2年4月13日(月曜日)~19日(日曜日))以降,各科学館,博物館等にて決定していただく予定です。
【経緯】
国立研究開発法人,大学共同利用機関法人等から御提案いただいた「一家に1枚」ポスターに係る企画について「一家に1枚」ポスター企画選考委員会における審議結果を踏まえて検討し,今年度は,大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立極地研究所に企画いただいたテーマに決定いたしました。
○「一家に1枚」ポスター企画選考委員会 構成員(五十音順・敬称略)
大草 芳江 NPO法人natural science 理事
大塩 りつ 国立大学法人電気通信大学 男女共同参画・ダイバーシティ戦略室 特任准教授
八田 弘恵 学校法人渋谷教育学園 幕張中学校・高等学校 教諭
濱 亜沙子 国立研究開発法人科学技術振興機構 日本科学未来館 事業部 プログラム企画開発課 プログラム推進・普及展開担当
吉野 千津 独立行政法人国立科学博物館 事業推進部 広報・運営戦略課長
また、制作に当たっては、下記の方々及び各機関に御協力いただきました。
<企画・制作・監修>
本吉洋一,江尻省,橋田元,渡辺佑基,中村卓司,野木義史,冨川喜弘,川村賢二,三浦英樹(大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立極地研究所)
<写真提供>
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立極地研究所
<編集・デザイン・イラスト>
有限会社ザ・エブリデイ・オフィス
【解説】「南極 ‐地球の未来を映す窓‐」
南極というと,ペンギンやオーロラが見られる氷に閉ざされた極寒の地というイメージを持たれる方が多いかもしれません。しかしそれだけではなく,南極は地球の過去・現在・未来を探る上で重要な材料が揃った科学の大陸でもあります。
このポスターでは,以下の4つの視点から南極やそこで行われている観測について,広く知っていただくことを目指しました。
■地球のタイムカプセルとしての南極
南極で大量に見つかる隕石,氷床の下に広がる岩石,そして分厚い氷を掘り抜いた氷床コアは,地球の過去を保存したタイムカプセルです。隕石には太陽系の歴史が,岩石には地球の地殻変動の歴史が,そして氷床コアには気候変動の歴史が記録されています。これらを詳しく調べることで,私たちの住む地球がどのようにして生まれ,その後どのような変動を経て今に至っているのか知ることができます。そして,こういった変動がどのようなメカニズムで起きたのかを解明することは,将来の地球環境を予測する上でとても重要です。
■地球環境を監視するセンサーとしての南極
日本の南極地域観測隊が発見したオゾンホールは,宇宙からの有害な紫外線を通過させてしまうことから,南極だけの問題に留まらず,地球規模の環境問題へと発展し,その原因となるフロンガスの規制につながりました。また,南極の夜空を彩るオーロラも地球環境と密接な関係があります。太陽活動や地球の磁場の変動を反映したオーロラですが,激しいオーロラが出るようなときには地上の電力・通信設備に悪影響を与えることもあります。現在,昭和基地で稼働を続けている大型大気レーダーPANSY(パンジー)は,地球の大気がどのような動きをしているのかを細かく探り,これからの気象予報や気候予測モデルの精密化に貢献します。
■未来の地球環境を映す窓としての南極
産業革命以後,大気中の二酸化炭素は右肩上がりで増え続け,これまで増加が遅かった南極でも2016年(平成28年)に400 ppmを突破しました。このまま増え続けると,南極やグリーンランドの氷床がやがて急激に融け始め,海水面が上昇して土地の水没など,自然環境だけでなく,社会生活にも大きな影響が出ることが懸念されます。また,近年では,南極の氷を融かすメカニズムとして,暖かい海水の流入が氷床を下から融かす作用も注目されています。これからの地球環境を守るために,私たち人類は何をしなければならないのかを判断する上で,研究や観測は欠かせません。
■国際社会と南極
日本が南極に昭和基地を開設し,本格的な観測を始めて60年以上が過ぎました。この間,オゾンホールや大量の隕石の発見,氷床掘削など数多くの科学的成果を挙げてきたことは上に述べたとおりです。地球環境全体が危機に向かいつつある今,地球の過去と現在から未来を見つめる視点を持って,国際社会が一致団結して問題解決に向き合わなければなりません。日本は,南極条約原署名国12か国の一つとして,南極条約を遵守し,世界各国との協力による研究や観測を積極的に進めています。
多岐にわたる南極観測を1枚のポスターに組み込むことはとても大変な作業でしたが,そこで行われている観測は,私たちの身近な地球環境と密接に結びついていることを御理解していただければ幸いです。
ポスター制作に当たり,快く画像や解説を提供していただいた皆様をはじめ,御協力いただいたすべての皆様に改めてお礼申し上げます。
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立極地研究所
地圏研究グループ 教授 本吉 洋一
宙空圏研究グループ 助教 江尻 省
気水圏研究グループ 教授 橋田 元
生物圏研究グループ 准教授 渡辺 佑基
副所長・教授 野木 義史
所 長・教授 中村 卓司
【問合せ先】
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立極地研究所広報室
TEL: 042-512-0651 E-mail: kofositu@nipr.ac.jp
〒190-8518 東京都立川市緑町10-3
【参考】「一家に1枚 南極 ‐地球の未来を映す窓‐」で楽しく学ぶポイント
たくさんの情報が掲載されている南極ポスターから,段階に分けて注目ポイントを紹介します。興味のある事柄は本やインターネットで調べて,更に理解を深めましょう。
■小学生(高学年)
・南極大陸の面積は日本の何倍くらいあるのかな。
・南極大陸は氷で覆われているよ。断面図で確認してみよう。日本のドームふじ基地と富士山はどちらが高いかな。
・海で囲まれた南極にはここだけしかいない生き物がいます。いろいろな南極の生き物の大きさを比べてみよう。
・日本の観測基地は外国の観測基地とどれくらい離れているかな。
・南極ではどんな観測をしているかな。
■中学生
・南極の空,海,陸(氷床)の観測や調査で地球の何を調べているのでしょうか。
・過去50万年の二酸化炭素濃度の変動を見てみましょう。今後,二酸化炭素濃度が増えるとどうなるのでしょうか。
・オーロラやオゾンホールはどの高度に出現するのでしょうか。
・約5億年前,南極昭和基地の場所は今のどの国と近かったでしょうか。
・もっと古い太陽系の歴史は何でわかるでしょうか。
■高校生
・地球の過去・現在・未来を知るための南極の観測を整理してみよう。
・予測される気候変動の誤差を小さくするために,南極でどんなことが調べられているのだろう。気候変動対策を採る場合,採らない場合の人類の将来を想像して,気候変動対策の重要性を確認しよう。対策として我々ができることを考えてみよう。
・南極条約で制限されているものは何か,1998年以降追加された約束は何か,また,南極条約や関連する議定書を遵守することがなぜ大切なのか,意義を考えてみよう。
・「南極ポールを囲む原署名国12か国の国旗」の写真をヒントに南極条約遵守の推進役となる原署名国12か国を確認しよう。
・各国の越冬基地の分布を調べてみよう。これをもとに日本の観測基地の役割や国際貢献を考えてみよう。
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March 17, 2020 at 12:03PM
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「一家に1枚 南極 ‐地球の未来を映す窓‐」ポスターのウェブサイトへの掲載について - 文部科学省
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