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一部の学術誌には、掲載予定の論文を別の科学者がチェックする査読というシステムが存在します。世に出る論文がある程度の質や正確性を保っているのは、査読者の審査に負うところが多いとされていますが、「査読者の中には非常に悪質な査読コメントを書く者もいる」と科学誌のサイエンスに記事を寄稿したサイエンスライターのクリスティ・ウィルコックス氏が指摘しています。
Rude paper reviews are pervasive and sometimes harmful, study finds | Science | AAAS
https://www.sciencemag.org/news/2019/12/rude-paper-reviews-are-pervasive-and-sometimes-harmful-study-finds
生物学者のニッサ・シビルガー氏とアンバー・スタブラー氏は、査読付き科学誌PeerJに掲載された論文で、「『問題のある査読』により、STEM分野で活躍する科学者の生産性やキャリアが害されている」と発表しました。シビルガー氏らは、14の分野で活躍している1106人の科学者に匿名のアンケートを実施し、過去に受けたことがある査読について尋ねました。その結果、全体の約58%にあたる642人から「門外漢の科学者による査読を受けたことがある」との回答がありました。また、そうした査読を経験した人の半数以上が「複数回にわたり問題のある査読コメントを受け取ったことがある」と答えたとのこと。
さらにシビルガー氏は、問題のある査読コメントはしばしば個人攻撃に終始し、建設的な内容を欠いていると指摘しています。例えば、アンケートに協力したある科学者は、査読者から「査読コメントを書く際に、『豚に口紅』や『クソでたらめ脳』という言葉を使わないようにするのには苦労しました」というメッセージを送りつけられたことがあるとのこと。また別の科学者は「著者の名字がスペイン語圏のもののように思えて、下手な英語で書かれているのが分かったので、目を通しませんでした」というメッセージを受け取ったこともあると回答しました。
問題のある査読コメントを受け取った科学者のうち、白人男性の科学者の多くは「それほど影響を受けなかった」と回答していました。一方、女性・Xジェンダー・有色人種の科学者は「非専門的な査読により、自己疑念の感情があおられて、科学的生産性が損なわれている」と報告する可能性が高かったとのこと。また、有色人種の科学者の多くは、問題のある査読が自身のキャリア上昇を遅らせていると感じていました。シビルガー氏はこの結果について、「あらゆる国籍の、あらゆる性別や民族の科学者が一様に問題のある査読コメントを受け取っていましたが、その影響は一律ではありませんでした」と述べました。
ミシガン大学アナーバー校に勤める心理学者デニス・セカクゥアプテワ氏は、科学系ニュースサイトScienceInsiderに寄稿したメールの中で「基本的に、女性や有色人種は知性や科学的思考に欠けているというステレオタイプにさらされているため、ステレオタイプを補強するような査読コメントを受け取ると、それがどんなに不正確な内容であっても心理的苦痛にさいなまれます。その結果として、自己疑念やパフォーマンスの低下、キャリア上昇の遅れといった影響が出る可能性もあります」と述べました。
こうした査読の問題に対しては、さまざまな意見があります。オーストラリアのマッコーリー大学で気候学を研究しているリンダ・ボーモント氏は、問題のある査読を「いじめの別形態」だとして、査読コメントを公開すべきだと主張しました。また、査読コメントではなく査読者の情報を公開して、査読を匿名ではないようにすべきだとの意見もあります。一方、ニューハンプシャー大学の微生物生態学者であるアドリアナ・ロメロ・オリバレス氏は「査読者の身元を明らかにすると、批評に不満を抱いた上席の科学者が報復に出るおそれがあります」と指摘しました。ロメロ・オリバレス氏は、査読者などを公開する代わりに、査読に二重盲検法を導入してはどうかと提案しています。論文の著者も査読者もお互いを知らない二重盲検法で査読を実施すれば、査読が論文の著者の属性に影響を受けることも、査読者が報復を受けることもないとのこと。
ウィルコックス氏は「論文を徹底的に曲解するReviewer 2というジョークが存在していますが、粗悪な査読者がもたらす深刻な悪影響は冗談では済まされません」と述べました。
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