近年、セクハラやモラハラ以外にも、さまざまなハラスメントが問題視されている。“香害”ともいわれる「スメハラ」もそのひとつだ。体臭対策などで、香水や柔軟剤の香りを振りまいている人も多い。香りが強すぎると周囲に不快感を与えるが、当の本人は“良い香り”だと思っているから指摘するのも難しい。柔軟剤のテレビCMなどでも、花の香りを振りまくことで、周りの人たちが笑顔になるような演出をしているため、その香りが不快感を与えているとは想像しにくいのかもしれない。
ニオイだけの問題にとどまればまだしも、人によっては気分が悪くなったり、頭痛やめまいを引き起こし、さらには呼吸困難に陥り、日常生活にも支障をきたすほどの症状に陥るケースもある。これは「化学物質過敏症」と呼ばれ、患者たちはタバコの煙をはじめ、防虫剤や洗剤、そして香水のニオイなどでも体調を崩してしまう。
NPO法人化学物質過敏症支援センターでは、こうした環境病患者の支援活動をしている。同センターには年間約2000件の相談があり、特に春先から夏にかけて問い合わせが多くなる。
「化学薬品は気温が高いと揮発します。では、寒い冬は大丈夫かといえば、衣類などに付着したものが暖房によって揮発するので、油断はできません」(同センター)
患者の症状には個人差があるが、自分が化学物質を使用していなくても、住居で壁紙などに使用された有機溶剤や、他人の衣類に付着した洗剤の残りなどに反応してしまう人もいる。
「自宅環境を整えたとしても、一歩外に出れば化学物質に触れる可能性があります。また、よそのお宅で遊んできた子どもに付着した化学物質に反応してしまうほど重症の方もいます。耳鳴りや目のかすみ、下痢など症状は多岐にわたるため、自分が化学物質過敏症だと気づかない、潜在的な患者も多いのではないでしょうか」(同)
アレルギー体質ではなくても、大人になってからでも、誰にでも発症する可能性があるのが、この病気の恐ろしいところだ。医師でも正確に診断できない場合があり、しかも周囲に理解されにくい病気のために、悩みを抱えている患者は多いという。化学物質過敏症を疑う場合は、専門とするアレルギー科や神経眼科で受診するといいという。
また最近では、発達障害の原因になるとの指摘もあり、同センターではや化学物質に依存しない社会の形成を目指している。
「私たちは化学物質を全否定しているわけではありません。しかし、日常生活に支障をきたすほど苦しんでいる人がいる、子どもの正常な発育を妨げることがあるということは知ってほしいです」(同)
一口に化学物質といっても、体に害を及ぼすものとそうでないものがある。たとえば、プラスチックにしても、可塑剤を使わないポリプロピレンやポチエチレンは問題ないといわれている。同センターでは、こうした知識の啓蒙活動も行っている。
現代社会において、化学物質をまったく使わないことは不可能に等しい。もちろん、生活を便利にする効果もある。しかし、自分が良いモノだと思って使っていても、すぐ隣には苦しんでいる人がいる可能性もあるのだ。
(文=OFFICEーSANGA)
取材協力:化学物質過敏症支援センター
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January 01, 2020 at 05:30PM
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