「PFAS」と聞いてもピンと来ないという人は多いだろう。「パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物」の略語だ。だが、米国人はこのPFASに日に何度も接触している可能性が高い。それどころか、体内に摂取しているかもしれない。
PFASは4000以上の異なる化学物質の総称で、家庭用品からファストフードの包み紙まで、あらゆるものに含まれている。人間の血液から検出されたとの調査結果さえある。(参考記事:「ファストフードで体内に「永遠の化学物質」の危険」)
そのうえ、1月22日に米国の非営利団体エンバイロンメンタル・ワーキング・グル-プ(EWG)が発表した調査結果によると、PFASは米国の大半の水道水にも含まれているという。
国民も政治家たちも、この問題を認識し始めている。
2019年12月には米国の予算案に、PFAS規制のための新たな費用が盛り込まれた。2020年1月初めにはPFASを規制する法案が米下院を通過し、上院での採決を待っている。また、デュポン社によるPFASの大量排出に立ち向かった弁護士ロブ・ビロット氏に関する記事が2016年の米ニューヨーク・タイムズ紙に掲載され、それに基づいたフィクション映画「Dark Waters」が2019年11月に公開された。
「現時点での知識でPFASと鉛を比べたら、鉛のほうが危険だと言えます。しかし、現時点で知られているPFASの危険性と50年前に知られていた鉛の危険性を比べると、どちらが勝つかは微妙なところです」と米ハーバード大学のデータサイエンティスト、シンディー・フー氏は話す。氏が所属する研究チームが2016年に出した報告によると、米環境保護局の基準値を超えてPFASが含まれる水道水を飲んでいる米国人は、少なくとも600万人に上る。(参考記事:「オバマ大統領が非常事態宣言、水道鉛汚染の現実」)
PFASとは? どこにある?
PFASは1940年代から様々な製品に使用されてきた。PFASを構成する炭素とフッ素の結合は、有機化学で作りだせる最も強力な結合の1つだ。この結合のおかげでPFASは水分や熱に強く、汚れが付きにくい性質をもつ。PFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(パーフルオロオクタン酸)のようにPFASの中でも頻繁に使われる物質は、半減期が長いために「永遠の化学物質」とも呼ばれる。
EWGは今回、米国の31州で44カ所の水道を調査した。すると、そのうちなんと43カ所でEWG独自の基準を超える量のPFASが含まれていた。
「まだ完全には理解されていない水道水の危険性の中でも、最も大きな問題ではないかと思います。しかもこれは何十年も前から続いています」。調査に携わったEWGのシニアサイエンティスト、デイビッド・アンドリュース氏はそう話す。(参考記事:「アメリカの飲み水は安全か?」)
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