プラズマリアクターのそばに立つクラークソン大学のトム・ホルセン教授とセルマ・メディドビック教授。
Clarkson University
PFASとはフッ素化合物の総称であり、70年以上前から人々の生活をより便利に、効率的にするものとして使われてきた。正式には「パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物」といい、1940年代に開発され、熱、油、汚れ、水を寄せ付けないことから、食べ物の容器や紙皿、調理道具のコーティング材として最適な物質として利用されてきた。1970年代には、軍事訓練や防災訓練での消火剤としても用いられている。
しかしその後、PFASと、がん、肝機能障害、甲状腺疾患、発達障害との関連性が明らかとなった。
Interceptの調査によると、今日では99%のアメリカ人の血流内にPFASの存在が確認されている。また非営利環境団体EWGによると、PFASに汚染された地域は、全米49州の700カ所以上にのぼる。
PFASは数千年もの間、分解されずに水中や空気中を漂う。つまりこれが体内に取り込まれると生涯にわたって体内に留まることになる。そのため、この物質のニックネームは「永遠に残る化学物質」だ。
ニューヨークにあるクラークソン大学の研究者グループは、水中のPFASを破壊する方法を開発した。彼らはアメリカ空軍と共同で、PFASをほぼ不滅のものとしている炭素とフッ素の結合を断ち切るためにプラズマリアクターと呼ばれる装置を用いている。
この技術は、地下水に混入したPFASだけに適用される(別プロジェクトで、土壌のPFAS除去についても研究中)。いずれは現在主流のろ過による処理方法よりも低コストでできるようになるだろう。
PFASの結合を破壊
アメリカ空軍は、2018年7月からPFASを含まない新たな消火剤を用いるようになったが、これまでの消火剤による汚染に対処する必要があった。アメリカ環境保護庁(EPA)の公式サイトによると、全米各地の空軍基地でPFASにより地下水が汚染され、汚染物質除去には22億ドル(約2400億円)以上のコストがかかるという。空軍がより低コストな汚染物質除去の方法を模索しているのは、そのためだ。
ライト・パターソン空軍基地にある接触強化型プラズマリアクター。
Clarkson University
この技術を実践するために、クラークソン大学の研究者グループは、2機のプラズマリアクターを搭載した全長20フィート(約6メートル)のトレーラーを製造した。2019年9月に2週間にわたって、オハイオ州のライト・パターソン空軍基地でPFASに汚染された地下水を汲み上げ、リアクターに流し込んだ。
まず、リアクターの底にあるアルゴンガスが、PFASの分子を表層に持ち上げる。次に高電位の電極を用いて、自由電子と陽イオンから成るプラズマを発生させる。そのプラズマが水面を火のように素早く広がり、PFASの分子構造に衝撃を与える。すると、PFASは炭素とフッ素に分離され、効果的に破壊される。
プラズマリアクターの設定を調整するクラークソン大学の博士候補者。
Clarkson University
プロジェクトを率いる主席研究員のセルマ・メディドビック(Selma Mededovic)氏によると、この方法で1ガロン(約3.8リットル)の水を処理するのに、1分を要するという。
これは、現在の標準的な除去方法と比べると、かなりゆっくりとしたペースだ。汚染水に活性炭を加え、それに化学物質を吸着させて除去する方法の場合、1分間で数百ガロンもの汚染水が処理できる。だがメディドビック氏によると、除去した汚染物質は焼却する必要があると言う。
1ガロンの汚染水から除去した汚染物質を焼却するのに、3、4ドル(約330から440円)のコストがかかる。対してメディドビック氏らのプラズマによる除去方法では、それより少なくとも40%はコストを抑えられる(ただし、この試算にはリアクターの費用は含まれていない)。
最初の商用プロトタイプが完成すれば、リアクターのコストもある程度目途が立つだろうとメディドビック氏は述べ、2020年内には実用化したい考えだ。
研究チームはそれまでに、1分で15ガロン(約57リットル)の汚染水を処理できるよう技術開発を強化していく。いずれは1分間で約200ガロン(約760リットル)の処理を目指している。
「活性炭による処理方法と競合できるレベルに処理能力を高めることに取り組んでいる」とメディドビック氏。
環境保護庁もPFASの法的な最大許容濃度を定めていない
クラークソン大学の研究チームが開発したプラズマリアクターによって、水中のPFAS濃度は、アメリカ環境保護庁(EPA)が定める飲料水に含まれる全般的な汚染物質の最大許容濃度である70pptよりも、大幅に下げることができる。だが環境保護団体は、基準が高すぎるのではないかという懸念を表明した(非営利環境団体EWGは、1pptを推奨している)。
EPAは2019年内に、飲料水に含まれるPFASについて、国家レベルの規制を設けると宣言していたが、すでにその期日は過ぎてしまった。
2020年1月10日、EPAがPFASに関するガイドラインを設定することを求める法案が、下院を通過した。法案ではPFASを「有害物質」として定めることで、EPAが製造業者に対してその除去を命じることができるようにしている。
だがトランプ政権は、この法案について「問題が多く、理不尽」で「訴訟にもなりかねない」とし、否認するよう圧力をかけている。
メディドビック氏は、科学的イノベーションも、法的な規制がなければ十分に活かせないと言う。
「公有、私有を問わず、多くの水源で、PFASが高濃度で存在することが分かっており、これは規制しなくてはならない。企業は何を製造し、何を排出しているのか、説明責任を果たすべきだ」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)
"化学" - Google ニュース
January 27, 2020 at 08:45AM
https://ift.tt/2sVQINY
70年以上使われてきた「永遠に残る化学物質」…プラズマによる処理法を開発 - Business Insider Japan
"化学" - Google ニュース
https://ift.tt/35OIntT
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update
Bagikan Berita Ini
0 Response to "70年以上使われてきた「永遠に残る化学物質」…プラズマによる処理法を開発 - Business Insider Japan"
Post a Comment