生物とは何か、生物のシンギュラリティ、動く植物、大きな欠点のある人類の歩き方、遺伝のしくみ、がんは進化する、一気飲みしてはいけない、花粉症はなぜ起きる、iPS細胞とは何か…。分子古生物学者である著者が、身近な話題も盛り込んだ講義スタイルで、生物学の最新の知見を親切に、ユーモアたっぷりに、ロマンティックに語る『若い読者に贈る美しい生物学講義』が11月28日に発刊されて、発売4日で1万部の大増刷となっている。
養老孟司氏「面白くてためになる。生物学に興味がある人はまず本書を読んだほうがいいと思います。」、竹内薫氏「めっちゃ面白い! こんな本を高校生の頃に読みたかった!!」、山口周氏「変化の時代、“生き残りの秘訣”は生物から学びましょう。」、佐藤優氏「人間について深く知るための必読書。」と各氏から絶賛されたその内容の一部を紹介します。
科学は大きな川のように
生物学とは、生物に関係するものごとを科学的に調べることだ。ここで「科学的」という言葉を使ったが、この言葉には「客観的で揺るがない」とか「答えが一つに決まる」とかいうイメージがつきまとう。
しかし、科学では、決して100パーセント正しい結果は得られない。大きな川のように右や左にくねりながら、この世の真理(というものがあったとして)にゆったりと近づいていく。それでも、決して真理には到達することはない。それが科学というものだ。
でも、真理に決して到達することができないなら、科学なんかやる意味がないのではないだろうか。う~ん、たしかにそういう考えもあるかもしれない。でも、とりあえず、私はそうは思わない。
たとえば、車を運転して会社に行くとしよう。あなたは信号が赤になったので止まった。しばらくすると青になったので、左右を確認してから前に進んだ。でも、何でそんなことをするのだろう。だって信号を守ったって、100パーセント安全なんてことはないのだ。
いくら交通ルールを完璧に守ったところで、決して100パーセントの安全が得られないのなら、守る意味なんかないのではないだろうか。
でも、おそらくあなたは、信号を無視して運転することはないだろう。交通ルールを守っても、たしかに100パーセントは安全にはならない。ならないけれど、かなり安全にはなるからだ。世の中は0か100かのどちらかだけではない。中間がたくさんあるのだ。
もし交通ルールを守るのに意味があるなら、科学にも意味があるだろう。科学の結果は完璧には正しくないけれど、かなり正しいからだ。そして、歴史を振り返ればわかるように、科学はそれなりに成功を収めてきたのである。
しかし、なぜ科学では100パーセント正しい結果が得られないのだろうか。科学には、なにか欠陥でもあるのだろうか。生物学も科学なので、まずはそれについて考えてみよう。
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December 29, 2019 at 02:00AM
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